おおいた温泉道 坂元初男さん あたみ温泉
新装したばかりのJR大分駅府内中央口から徒歩3分。県都の玄関口のすぐそばで入湯客を出迎える。なじみの地元客から観光客、出張中のビジネスマンまで、大分市末広町の「あたみ温泉」は多くのリピーターに愛されている。豆タイルを敷き詰めたレトロな外観に引かれ、最近は若い客も増えているという。
同市中央町のすし屋の大将、坂元初男さん(66)も常連客の一人。店を閉めた午後10時ごろに必ず立ち寄り、疲れを癒やしている。「一日が無事に終わったことを実感する場所。定休日以外は毎日通っています」。仲良くなった他の客との会話を楽しみながら、30分間入浴する。
初めて訪れたのは20歳のころ。当時は自宅に風呂がなかったため、通い始めた。当初は自宅と職場から近いというぐらいしか感じていなかったが、年を重ねるとともにお湯の美しさに魅了されていった。「かけ流しのお湯がとてもきれい。お湯の質もここが一番です」と言い切る。
加水、加温、湯の循環などは一切せず、正真正銘の源泉かけ流しが自慢の湯。泉質はナトリウム―炭酸水素塩泉。茶色い湯は透き通ってさらさらとした感触で、入浴後は肌がつるつるになる。よく眠れないという人が、入浴後に寝付きがよくなったという話もあるという。
番台で男湯、女湯を仕切った脱衣所には、常連客が入浴セットを保管する棚がある。女湯の脱衣所には冷蔵庫もあり、買い物帰りに立ち寄ってもゆっくり入浴できる。常連客からは「ちょっとした心遣いがありがたい」という声も。
「多くの人に愛されているこの場所を、できる限り守り続けたい」と経営者の榎本末子さん(76)。駅周辺が大きく変貌を遂げようとも、坂元さんらが通う温泉の風景は何ら変わらない。
さかもと・はつお 鹿児島県出身。大阪府のすし屋で修業を積んだ後、20歳の時に大分市に移住。中央町で「あい寿司」を営んでいる。
データ
1957年に開業。午後2時~同11時。大人380円、小学生150円、未就学児70円。11枚回数券は3800円とお得。火曜日定休。TEL097・532・4324。