おおいた温泉道 熊谷麗さん 別府市鉄輪・谷の湯
鉄輪温泉のメーン通りから少し外れた、静かな場所にたたずむ共同浴場。「地元の人が大事にしてきた昔ながらの温泉。鉄輪にしてはさっぱりした湯で、湯上がりもべたつかない感じがいい」。薦めてくれた別府八湯温泉道名人会事務局長の熊谷麗さん(37)=別府市=が満面の笑みを浮かべ、浴室への階段を下りた。
同市北中に今も残る住民組織「北中組」が経営。通りから一段下がった所に立つ2階建てで管理人もいる。浴室は1階。組長の国崎又一さん(69)によると、1938年以前からあったことが記録に残り、昔は2階が公民館だった。
泉質はナトリウム—塩化物泉。取材日は特別に不動明王がある男湯へ。熊谷さんは肌で湯の感触を確かめると「今日の湯は白っぽいかな。掛け流しの温泉は仕事のストレスも全部流してくれるよう」。
生まれ育った同じ温泉地の九重町湯坪では気付かなかった魅力に、今はどっぷりと漬かっている。温泉道のため勤め先も住まいも別府に移し、保健師として働く毎日。仕事柄、地域の人と接する機会も多く、町への親しみは増すばかりだ。「将来『別府に来るとホッとする』と言われるような町づくりに関わっていきたい」と夢を描く。
谷の湯は温泉道1巡目のころ、急いで温泉を回った日の最後に訪れた。入浴すると、疲れが一遍に吹き飛んだ。以来、疲れた時に足を運ぶ。
かつては混浴で、その後に男女を仕切る壁を設けた痕跡が見て取れる。「浴槽のへりに顎を乗せて入る」のがお気に入りの入浴法だ。湯上がり、通りを吹き抜ける風がさらに気分を爽快にしてくれた。
温泉は「全てをリセットしてくれる癒やし」という熊谷さん。最後に「余分な皮脂が取れる明礬温泉の後、保湿力のある鉄輪に入るのが女性にはお薦め」と教えてくれた。
くまがえ・れい 九重町出身。別府八湯温泉道名人会事務局長として別府八湯検定試験や旅館での温泉講座を企画・運営。3年ほど前から始めた温泉道は4巡目に突入した。
営業時間は午前6時半から午後9時半まで。年中無休。入浴料は大人(中学生以上)150円、小学生以下50円。建物近くに駐車場(10台分)がある。問い合わせ先は設けていない。