おおいた温泉道 加藤大輔さん 別府市野田・柴石温泉
川のせせらぎが聞こえる閑静な山あいにある別府市営柴石温泉=同市野田。別府八湯の一つで、895年に醍醐天皇が病気療養で湯治したと伝えられる。普通湯、あつ湯、露天風呂、蒸し湯と多彩な湯を一度に楽しめるのが特徴。常連客や県外からの観光客に愛され、平日でもにぎわう。
「人に紹介するなら、ここと決めている。秘湯感があるし、お風呂が多いので入りやすい」。加藤大輔さん(51)=杵築市=は、いつも通り42度の普通湯に漬かり、ストレッチをして体をほぐしながら話した。
その後、お気に入りの蒸し湯へ。木製の扉を開けると、中は薄暗く、蒸気で視界が遮られる。床下に竹を敷いており、間から温泉の流れる音が聞こえる。「『無』になれる雰囲気が好き。ここの蒸し湯は最高」と表情を緩ませる。露天風呂で常連客と談笑した後、45度のあつ湯で締めくくった。
幼少期、温泉好きだった父親が連れてきた。裸電球に照らされた館内を歩く心細さが記憶に染み付いている。腰を痛めて休職した20代の頃は約2カ月間、ほぼ毎日、湯治で通い詰めたという。「苦しかった時期、ここに来てホッとしていた。それもいい思い出ですね」
温泉道は2013年7月にスタート。車に自転車を積んで、路地裏の公衆浴場などを楽しんだ。「こんな場所に温泉があるんだと驚いた。地域の信仰や歴史を知るのも面白い」と振り返る。名人位は1年3カ月後に取得した。「お湯だけでなく、周囲の雰囲気も大事。カワセミが鳴きだす夏から晩秋に、また来たい」と笑顔を見せた。
かとう・だいすけ 1963年、杵築市生まれ。理容師。同市商工会青年部長を務めた。半年前から日本酒の飲み比べを趣味としており、「県外に地酒を飲みに行きたい」。
データ
午前7時~午後8時。入浴料は大人210円、小学生100円。家族湯は午前9時からで1時間1620円。定休日は第2水曜日。問い合わせは柴石温泉(TEL0977・67・4100)。