おおいた温泉道 岩井今朝信さん 湯の里渓泉
「おんせん県」の空の玄関口「大分空港」がありながら温泉は2カ所の国東市。その一つが「湯の里渓泉」(国見町赤根)だ。国東半島中央部で湧く貴重な湯を求めて毎晩、多くの市民が山間部の谷筋へ車を走らせる。
「肌触りのよい湯。ペットボトルで持ち帰り、毎朝コップ1杯飲んで健康づくりに役立てている」と話すのは、ほぼ毎日通う岩井今朝信さん(76)=同町竹田津。泉質は含硫黄―カルシウム―硫酸塩泉(硫化水素型)。浴場内の飲用蛇口からは無色の源泉が流れる。
男女とも屋内に浴槽とサウナがあるだけだったが、2014年春に露天風呂ができて魅力が増した。源泉が注ぐ1人用の五右衛門風呂は33度ほどと、温度が低いもののぜいたくな気分を味わえる。加温した大浴槽(約6平方メートル)は顔見知りたちの社交場。「今日は何時から入ってるん」。面識のない客には「どこから来たん」と気さくに話し掛け、いつの間にか和やかな雰囲気となっていた。
昨年9月、常連客に声をかけて約50人で「温泉愛好会」をつくった。「裸のお付き合いの次は一緒に飲みたいなと思って」。初代会長として開いた宴会は盛り上がった。温泉を通じて広がる人付き合いも楽しみの一つだ。
数え年で喜寿を迎えたがいまだ現役。町内の住宅型有料老人ホームで施設長を務め、パワフルに走り回っている。忙しい日々だが自宅の風呂に漬かることは年に数回という。
湯から上がり、更衣室に戻ってきた。開口一番、「よーし」。着替えながら「また明日頑張ろう」と続けた。温泉で活力を生み出す日々の姿がうかがえた。
いわい・けさのぶ 国東市国見町竹田津出身。旧国見町の職員で、「湯の里渓泉」が町の研修センターだった時代から湯に親しんできた。
データ
午前11時~午後10時(月曜は午後4時から)。年中無休。中学生以上400円、4歳~小学生200円、3歳まで無料。午後7時以降、中学生以上は半額。0978・82・1300。