おおいた温泉道 小野優太さん 鶴寿泉
雪舞う寒空の下、昨年夏に名人になったばかりの小野優太さん(24)=別府市=の案内で訪れたのは、同市明礬(みょうばん)の小道沿いにある市営鶴寿泉。江戸時代に明礬の地を治めた豊後森藩第3代藩主の久留島通清氏が訪れた際、村人が温泉でもてなし、喜んだ通清が縁起の良い「鶴寿泉」と名付けたのが始まりと伝わる。現在の施設は1996年に造られた。
地元住民や観光客らの人足が絶えない人気温泉。瓦ぶき屋根の質素な外観で、入り口ではお地蔵様とお大師様が迎えてくれる。「月に3、4回は通うお気に入りの場所。保温効果抜群で常連客とも交流でき、体と心がポカポカになる」
さい銭を入れ、湯煙立ち上る浴室へ。浴槽は正方形の木枠で約2畳分の広さだ。湯は殺菌性と酸性の強い含鉄泉で、鮮やかな乳白色の濁りは日々色合いが変化するという。源泉は62度近くあり、浴槽まで巡ってきても高温のため、冷水で薄めないと入れないほど。長時間漬かることはできないが、肌がピリピリして体の芯から温まってくる。
同市中須賀出身で幼いころから地元の温泉に慣れ親しんできた。さらに昨年5月からは中学時代の同級生で名人の生野達也さん(24)=同市=と競うようにほぼ毎日通い、温泉道は3巡目に入っている。
普段は警備員の仕事で忙しいが心強い“相棒”はミニバイク。市街地の狭い道もスイスイと駆け抜けていく。「別府には個性あふれる温泉がいっぱいあって面白い。温泉に入っている瞬間は、無になれてリラックスできる。仕事への活力も生まれてくる」
寒さを忘れるほどポカポカになった真っ赤な体で話すと、軽快にミニバイクを走らせていった。
おの・ゆうた 温泉道88巡を達成し最高位「泉聖」の称号を持つ指原勇さん(67)=別府市=と出会い、温泉に目覚めた。別府八湯温泉道名人会に入り、共同温泉の清掃などに参加する。
データ
午前7時~午後8時。無料(さい銭箱あり)。不定休。男女とも内湯のみ。駐車スペースは2台分。問い合わせは別府市ONSENツーリズム部温泉課(TEL0977・21・1129)。