おおいた温泉道 二宮奈央樹さん 別府市風呂本・上人湯
真っ白な湯煙が幾筋も立ち上る景観は、温泉観光都市・別府の象徴でもある。湯治場として長い歴史を誇る鉄輪温泉は13世紀、時宗の開祖・一遍上人が開いたと伝わる。その名を冠した「上人湯(しょうにんゆ)」(別府市風呂本)は地元の共同浴場として大切に受け継がれてきた。
「ここは私が物心ついたころから利用するなじみの場所。体の底から慣れ親しんだ温泉なんです」。温泉道名人の二宮奈央樹さん(40)=別府市=は湯船にゆっくり体を沈めると、心地よさそうに息を吐き出した。
鉄輪かいわいで生まれ育ち、「産湯も温泉を使ったと聞いている」と話す生粋の温泉好き。自宅に近かった上人湯に小さい頃から足しげく通い、湯上がりにはすぐそばの大谷公園で涼むのが常だった。
泉質は塩化物泉。「クセもなく、柔らかい肌触りで万人受けするお湯」と太鼓判を押す。瓦ぶきの外観、脱衣所の壁に木製の入浴札を掛けるスタイルが湯治場独特の風情を醸し出す。鉄輪温泉のメーンストリートで散策スポットとして観光客に人気の「いでゆ坂」に面し、屋外のにぎわいを聞きながら心静かに湯に漬かるのも一興だ。
知人の勧めで温泉道を始め、2010年に名人位を取得した。「温泉は生活の一部」と言い、一日一湯が基本。他の入浴客との語らいも楽しみで、温泉に入らない日は「翌朝の体調がどうにも芳しくなくて」と笑う。「喉が渇くのと同じように、体が自然と温泉を欲してくるんです」
現在は別府八十八湯の9巡目に挑戦中。「別府の温泉はバリエーションも豊富で、人それぞれにお気に入りの“一湯”が必ずある。マナーさえ守れば誰もが気軽に楽しめる文化。湯の恵みに心から感謝して、これからも自分なりに湯巡りを堪能していきたい」
にのみや・なおき 1974年、別府市生まれ。介護士。温泉道は9巡目に入り、永世名人(11巡以上)も見えてきたが「がつがつせず、自分のリズムでじっくり温泉を味わいます」。
立ち寄り湯の利用時間は午前10時~午後5時。入湯料は100円。利用する際は道路を挟んで向かいにある喫茶店「保月(ほげつ)」、または「まさ食堂」で入湯料を支払い、木札を受け取る。