おおいた温泉道 三重野正則さん 別府市光町・此花温泉
閑静な住宅街の路地を進むと、「此(この)花(はな)温泉」と力強い字で書いた木製の看板が現れる。「看板は光町の大火(2010年1月)の中でも焼け残った。建物は焼失したが、おもかげが残ってくれてうれしい」。名人の三重野正則さん(38)=別府市=は笑顔を見せた。
大火で焼失した建物は11年2月に再建。県内外の温泉ファンからも募金が寄せられた。真新しい湯船は広く、タイル張りの浴室は日光が注ぎ明るい雰囲気だ。
泉質は単純泉で、ナトリウム成分などが豊富。無色透明で柔らかい肌触りが親しみやすく、香りにくせもない。湯自体は堀田温泉などからの引き湯で、適温にするため、地下からくみ上げた井戸水を加えている。41〜43度とぬるめの温度設定が心地よく、「子どもも大人も入りやすく、ついつい長湯をしてしまう。湯上がりはしっとり、つるつるです」と泉質を楽しむ。
近所で育ち、幼い頃から利用してきた。大火の際は燃え上がる温泉の建物を目の当たりにし、長年愛した場所が消える不安と衝撃に襲われた。共同温泉というコミュニティーがなくなり、住民は別の温泉を使うなどちりぢりに。「温泉をよみがえらせ、地域の絆を取り戻したかった」と話すのは復興に尽力した光町1区自治会長の星野隆昭さん(74)。「今では一日平均300人ほど訪れる。住民や観光客みんなの大切な交流の場になった」という。
妻・晴美さん(40)と長男・陽太君(3)も名人。陽太君は名人道最年少の生後11カ月で名人位を獲得した。ベビーベッドがある此花温泉は赤ちゃん連れにも助かるという。「別府八湯・別府温泉の良さを世代を超えて伝えたい。家族で楽しめる温泉がもっと増えれてくれれば」。温泉と家族、地域への愛情を感じた。 みえの まさのり 別府市出身。ケータイ温泉道281代名人で現在9巡目。昨年生まれた次男の新太君を含め家族4人全員で88湯を11巡する「永世名人位」に挑戦中。理学療法士。
此花温泉(光町7—4)は3月までの冬季は午前6時半から、4〜10月は午前6時から営業。いずれも午後10時まで。1人100円で、5回券は400円で販売している。