おおいた温泉道 作本豪さん 別府市御幸・かなわ荘
泉都・別府市でもひときわ湯煙が立ち込める温泉街・鉄輪。その一画に、88湯の3巡目に挑む温泉名人がたびたび立ち寄る老舗温泉旅館「かなわ荘」がある。
明治を思わせるモダンな室内装飾に、レトロな色合いの照明。抜群のムードに加え「いろんなお湯を楽しめて、本当にリラックスします」と紹介者の作本豪さん(49)=大分市=。
桜を間近に望む半露天、石灯籠など細工を凝らした露天、砂湯に蒸し風呂、家族風呂—。ナトリウム塩化物泉の効能とともに、それぞれの湯に施された心尽くしの演出が心身をほぐす。
作本さんがこうした名湯巡りを始めたのは、温泉名人だった職場の2代前の前任者から紹介されたのがきっかけ。88カ所を巡ると免状がもらえるという企画に好奇心をくすぐられ、大分着任後間もない昨年5月から休日ごとに訪ね歩いた。
学生時代は探検部に所属し、全国各地の鍾乳洞に潜入するなど体当たりの企画には自信もあったが、泉都の熱い湯には面食らったという。故郷の熊本県玉名市の温泉とは段違いで、1カ所目の竹瓦温泉では「体を沈めて10秒くらいで出てしまった」。1日に10カ所近くを巡るなど修業のような気持ちで巡る中、次第に「身も心も断然、シャキッとする」と魅力に開眼。今や、どんなに熱くても6分は漬かる“あつ湯派”だ。
泉都のもう一つの魅力は、各地の大衆浴場で生まれる出会いにある—と作本さんは語る。知人の紹介で知ったかなわ荘との縁も大切にし、社内の部下を連れて訪れることもしばしばだ。「リラックスしながら裸の付き合いで話をし、うち解けることができる。温泉の魅力ですね」と話した。
名人の目は今、九州88湯巡りというさらなる高みに向かう。新たな人との出会いに、心がうずいている。
さくもと・たけし 熊本県玉名市出身。昨年4月から日本生命保険大分支社長。県生命保険協会長も務める。社内に「温泉部」を立ち上げ、休日の折々に部下を誘っては温泉巡りを楽しみ、しんぼくを深めている。今のところ「部員は全員男性」だが、参加者は随時募集中だ。