おおいた温泉道 坪井哲一さん・春日温泉
JR別府駅すぐ近くの春日通りに面した春日温泉(別府市駅前本町)。1階に温泉と自治会の事務室、2階が公民館という、市内によくある自治会施設と公民館を兼ねた共同浴場だ。通りから見ると、温泉があるとは気付かずに通り過ぎてしまいそう。
「昭和のような雰囲気で、子どものころに戻ったような感じ。自宅が北浜にあるが、周囲の市営温泉は改築が進みきれいになった。そういうのもいいけど昔ながらの風情も好き」。名人の坪井哲一さん(49)は語る。
春日温泉は1926年から続いている。浴室の石柱には建造者の名前が彫られ、石仏が入浴者を見守る。泉質はナトリウム炭酸水素塩泉。番台に座る事務員の今村初美さん(50)は「柔らかい泉質で、髪もさっぱり洗える優しい温泉。家庭にお風呂があっても、『やっぱりここの温泉がいい』と通っている人も多い」と笑う。日頃のメンテナンスは自治会の温泉部長を務める父進さん(80)が担い、歴史ある温泉を次世代に受け継ごうと日々、汗を流している。
2000年春に家業の料理店を継いだ坪井さん。朝、温泉に入ってから魚の仕入れに向かうのが日課だ。「仕事が終わるのが深夜なので。身も心もさっぱりさせて、仕事のスイッチを入れるんです」と顔を引き締める。
温泉道へのチャレンジを始めたのは今年4月から。「約2カ月で名人になりました。店ではフグや地元の魚を扱っており、観光客から温泉のことを聞かれることも多い。名人になったので希望にぴったりの温泉を薦められますよ」。客との会話もより弾むようになった。おいしい料理と酒を“つまみ”にして、今夜も温泉談議に花が咲く。
(文・衛藤秀史、写真・鈴木幸一郎)
つぼい・てついち 1966年、別府市生まれ。大分、別府両市や大阪府で料理長などを務め、2000年から季節料理「ちくでん」(別府市北浜)店主。趣味はビリヤード。
データ
入浴時間は午前6時半~11時と、午後3~11時。入浴料は100円。年中無休。問い合わせは駅前本町自治会(TEL0977・23・1486=午前中のみ)。