おおいた温泉道 牧啓太さん 別府市鉄輪 鬼石の湯
「それにしても別府の温泉は奥が深い」とうなった。別府市で生まれ育った牧啓太さん(31)が温泉道に目覚めたのは1年前。夢中になって巡ると、身近で当たり前にあった温泉が特別なものだと気付いた。「まだ知らない別府に出合える」。そんな魅力にどっぷりと漬かっている。
「共同温泉も個性や味があって魅力的だが、ここは非日常の空間を楽しめます」。別府市鉄輪の「鬼石の湯」は木々の緑に囲まれ、観光地や幹線道路に近いことを感じさせない。休日にゆっくりと訪れるとっておきの場所だという。熱すぎない薄緑色の湯に体を沈め、「地元だけど、遠くまで旅行に来た気分にさせてくれる」と伸びをした。
昨年6月、牧さんが働く飲食店に「温泉名人」と書かれた黒タオルを巻いた客が訪れ、興味を持った。すぐに温泉巡りを始め、この1年間で300を超える湯を訪ねた。鬼石の湯は本格的に温泉巡りを始める前から通っていた。内湯、露天風呂、展望風呂に温泉がたっぷりと注がれ、3種類の景色を楽しめるのもお気に入りの理由という。
泉質はナトリウム・塩化物泉。「濃い成分が体の奥まで温めてくれ、知識がなくても良さを感じられる。料理に例えれば、だしが効いた感じの味わい深さが好き」と飲食店で働く牧さんらしく、におい、肌触り、味など五感で楽しむべきと教えてくれた。
「顔を洗うような感覚」で毎朝、共同温泉へ。「まさに社交場です。別府人の生活にこれほど根付いていることも、泉質がこんなにあることも知らなかった」と泉都の魅力を語る。
「名人といえども、まだ巡ったのは一部。奥の奥まで知り尽くして温泉道を語れるようになりたい」。お気に入りの湯に漬かりつつ、まだ知らない温泉との出合いを心待ちにしていた。
データ: 営業時間は午前10時から午後10時まで。定休日は第1火曜日(祝日の場合は翌日)。入浴料は大人620円、小学生300円、幼児200円。家族湯2千円。問い合わせは鬼石の湯(TEL0977・27・6656)。
牧啓太(まき・けいた)別府市出身。大阪のすし店で修業後、23歳で帰郷し、同市北浜の飲食店で店主を務める。観光客との温泉談議を楽しみ、入浴マナーや魅力を伝えている。