明石淳一さん 別府市堀田・夢幻の里春夏秋冬
「はぁー、熱いけど気持ちいいねぇ」。温泉巡りのスタンプラリー10巡目中の温泉名人、明石淳一さん(58)は湯で顔をなでてから、しばし目を閉じた。かすかな硫黄のにおい、源泉の噴気が出す「シューシュー」という音、鳥のさえずり、木々のざわめき。全てが日常から解き放ってくれる舞台装置だ。
明石さんが紹介してくれたのは、別府市の堀田温泉の一角、「夢幻の里 春夏秋冬」。別府インターチェンジから車で5分、自然あふれる環境で秘湯のような趣がある。今月はサザンカやツバキを楽しめて、夏には湯の間を流れる川にホタルが集まる。秋には色づいたカエデ、冬は雪景色で迎えてくれるらしい。「ここは泉質もいいが、ロケーションが何よりも好き」と明石さんは話す。
泉質は単純硫黄泉。源泉は138度の蒸気で、これを沢の水をためた露天風呂に引き込み、温泉成分を溶かし込む。硫黄成分の分子の大きさによって青や白濁色に変わる。明石さんが好きなのは神秘的な青だが、この日は白濁色。「青い湯に入りたかったなあ。でもこの色も気分を盛り上げてくれる」と白っぽい湯をすくった。pH6・4と中性。ピリピリせず軟らかい。
明石さんが温泉に求めるのは「非日常」。源泉の色や匂い、時には味も見る。巡った455カ所のうち大半が県内で、別府市だけで169カ所を数えるという。「別府市の共同湯には組合員だけしか入れないところもあり、奥が深い」。湯巡りの間に知り合う温泉仲間と情報交換し、一緒に温泉宿に泊まりに行く"合宿"も楽しい。
夢幻の里は昨年11月にオープンした。2007年の火事で旧施設は休業し、藤田敦子さん(58)が周囲の自然に一目ぼれして後を引き継いだ。ホタルを保護するため、前の経営者にならってせっけんの持ち込みは禁止。「いつも自分の手で湯加減をみます。温度計よりも人肌でみたい」と、赤くなった手をなでた。
あかし・じゅんいち 北九州市出身。「別府八湯温泉道」名人会福岡支部長。出身地で教師をしながら、ほぼ毎週大分の湯を巡り、延べ919湯を踏破している。
データ
「夢幻の里 春夏秋冬」(TEL0977・25・1126)は不定休。営業時間は3月まで午前10時半から午後9時、4月以降は午前10時から午後10時まで。午後6時以降の入浴は事前連絡が必要。男女別の大浴場と家族風呂が四つ。大浴場は大人700円、小学生以下300円。家族風呂は1時間2100〜2800円。