おおいた温泉道 鷹崎義美さん 中津市山国町・なかま温泉
中津市山国町中摩の「なかま温泉」。午前11時の営業開始が近づくと常連の鷹崎義美さん(99)=耶馬渓町=が現れる。ゲートボールが趣味で、練習や試合がない日は毎日、自らハンドルを握り、隣町から軽トラックでやってくる。
「他の客に迷惑を掛けたくない」と一番風呂にこだわる。湯の中で脚や腰を入念に曲げ伸ばすからだ。「自宅の風呂ではできんけん。おかげで腰も曲がっとらんじゃろ」。チームでは今も中心選手で、昨年は日本ゲートボール連合会から健康功労者表彰を受けた。
体がほぐれると、ゆっくりと温泉を堪能する。「年を取ると肌が乾燥してかゆくなるが、ここの湯に入るとすべすべじゃ」。水素イオン指数(pH)8・97のアルカリ性泉。ぬるぬるした感触で、筋肉痛にも効くと評判だ。「近郊の温泉にも行ったが、ここが一番じゃ」と目を細める。
温泉は住民有志が組合を結成し、2000年に掘り当てた。07年に法人化し、少しずつ施設の充実を図っている。代表の長野淳雄(すなお)さん(73)は「経営は厳しいが、何とか黒字を確保できている」と話す。
「泉質がいい」と人づてに聞き、2、3年前から通っている。「体はどこも悪くない。免許も更新したばかりで、102歳まで乗れる。まだまだ長生きできそうじゃ」
戦争体験者でもあり、「何度も命拾いした」と振り返る。陸軍飛行隊に志願したが、臭覚に異常があり、パイロットの適性検査に失格、整備士になった。満州で終戦を迎え、シベリア抑留時には飢えのため、毒キノコを食べて死んだ仲間を多く見てきた。「人生、何があるか分からん。家でごろごろしちょんのはもったいない」。風呂上がりにつぶやいた。
たかさき・よしみ 1916年、中津市耶馬渓町生まれ。戦争とシベリア抑留で軍隊生活を12年半経験。復員後は農業や養鶏に従事した。ゲートボール歴は30年以上。
データ
国道212号沿い、道の駅やまくにの隣。午前11時~午後9時。年中無休。大人300円、回数券(6枚つづり)1500円、小学生100円。TEL0979・62・2655。