おおいた温泉道 佐藤正敏さん 別府市風呂本・渋の湯
「うわー、やっぱりこれええなー」
別府八湯温泉道名人会理事長の佐藤正敏さん(43)=別府市=が思わずうなる温泉がある。同市風呂本の「渋の湯」。別府八湯・鉄輪温泉のメーンストリート、いでゆ坂沿いにある共同湯の一つだ。
「ここは朝が格別。ちょっと熱めの湯が体を目覚めさせてくれ、一日のスタートが切れる」。今月中旬に浴槽などの改修工事が終わり、より気持ちの良い時間を過ごせるようになった。
泉質は肌に優しい弱酸性のナトリウム塩化物泉。無色透明で無臭だが、メタケイ酸などの成分を多く含んでおり、保湿効果も抜群という。とろみがあり、手触りも非常に滑らかで飽きさせない。「毎日漬かる近所のおばあちゃんは肌がツルツル。見えない絹の衣で体が包まれているかのよう」と湯を肌になじませた。
隣の女性用風呂から時折、明るい笑い声が聞こえる。泉質から女性人気が高いのだろうか。竹を使った冷却装置「湯雨竹(ゆめたけ)」で90度近い源泉を適温にするため、加水に比べて成分が薄まらない。浴場内に響く竹をしたたる温泉の音は優しい旋律のように心地よい。さっぱりした後は近所の食堂で冷麺を食べるのがお決まりのコースという。
歴史は古く、江戸時代の文献にも登場し、住民や湯治客に長く親しまれてきた。地元だけでなく、県外にも根強いファンが多い。
「別府をもっと知りたい」という思いからタクシー運転手時代に始めた温泉道。名人有志でつくる会のトップとして、別府八湯の魅力を発信するために知恵を絞る。「生きている間に温泉道を88巡して『泉(せん)聖(せい)』の称号をもらいたいな」と目を細めた。
さとう・まさとし 1972年、大分市生まれ。ヘルパーとして働く傍ら障害者が温泉を楽しみ堪能できるよう、ボランティアでさまざまな支援活動に力を入れている。