国武奈菜さん 姫島村・拍子水温泉
「姫島村の拍子水温泉に行きませんか?」。車いす温泉名人、国武奈菜さん(31)=別府市御幸=の提案に驚いた。車椅子の利用者と聞き、遠くへ行けるのかと不安だったからだ。国東市の伊美港で初対面。笑顔で車椅子に乗る様子を見てそんな不安もどこかへ。島まではフェリーで約20分。村健康管理センターを目指し、「車いす温泉道」が始まった。
2、3人からサポートしてもらい温泉を巡るのが「車いす温泉道」。この日は島民の好意で、浴室に車椅子を入れることができた。
サポーターの江川千秋さん(41)と熊谷麗さん(37)に支えられて湯船へ。泉質は炭酸水素塩冷鉱泉。黄土色。24・9度の源泉と、温水を加えた41度の温泉に交互に入った。
「ほら、見て」と湯の中で腕を見せる。無数の気泡が付き「このシュワシュワした感じが珍しく、とりこに。湯上がりの肌はツルツル」。源泉に張る油膜は成分が濃い証しだという。海を眺め、ゆっくりと肌が赤く染まっていく。
「飲用」の文字に引かれ、蛇口をひねった。慢性消化器病、糖尿病などに効能があるという。備え付けのコップにたっぷりと注ぎ、ごくり。う〜ん。鉄分たっぷりの独特な味わいに、一口を飲むのがやっとだ。
国武さんが温泉道を始めて6年目になる。車椅子で訪れる姿を歓迎する場所が増えてきたという。年配の女性たちが「どこから来たん」「ミカン食べよ」と話し掛けてくれた。センターは島民の憩いの場で、「人懐っこさもここの魅力」とPRに熱が入った。
「施設がバリアフリーになると便利だけど、昔ながらの温泉らしさがなくなる。何より、人のぬくもりがうれしい」。帰りのフェリーで海風に吹かれ、しばし旅気分に浸った。
くにたけ・なな 福岡県太宰府市出身。立命館アジア太平洋大学卒。サポーターと出会い温泉に入る夢がかない、別府八湯を巡る「車いす温泉道」に挑戦。2010年に初代名人の1人となる。
データ
姫島村健康管理センター(TEL0978・87・2840)の営業は火〜金が正午から、土日と祝日は午前10時から。月曜は休み。村外者は大人1人310円(中学生以下150円)。