地獄原温泉 心も体も「まるで極楽」
別府八湯・鉄輪温泉のいでゆ坂。あちこちに湯気が立ち上る石畳の坂を歩くと「地獄原(じごくばる)温泉」(別府市鉄輪東)が見えてくる。名前のインパクトもあり、地元だけでなく観光客にも人気が高い。
歴史は古く明治初期にできた。祖父の代から温泉を管理する地獄原温泉組合の本田秀敏さん(63)によると、名称は湯が地獄のように湧いていたことから付いた当時の地名「地獄原」が由来。昭和初期ごろまでは近くに「鉄輪地獄」という観光名所もあったという。
入り口ではお地蔵さんが迎えてくれる。入湯料はさい銭箱に入れる仕組みで、地域のぬくもりが感じられる。地元の常連客は「いつもありがとう」とお地蔵さんに手を合わせてから入湯するそうだ。
泉質は肌に優しいナトリウム塩化物泉。滑らかな手触りが特徴で肌にもよくなじむ。保湿力があるとされるメタケイ酸を多く含んでおり、美肌効果も高い。1994年に改築された建物は、手入れが行き届いて清潔な印象。浴場に敷かれた石畳は足触りがいい。
「地獄とは名ばかりの極楽だよ」。近くに住む常連の神品良美さん(68)は湯船に漬かりながら、気持ちよさそう。東京から飛行機でわざわざ訪れる根強いファンもいるそうで「地元住民や観光客が気軽に語らえる憩いの場。毎日癒やされてるよ」と目を細めた。
この“地獄”は訪れる人たちを笑顔にし、その心と体を癒やしている。