鶴川温泉 じんわり肌に染み入る
のどかな農村地帯の玖珠町太田。県道玖珠山国線から小道に入り、100メートルほど進んだ先に、地元住民に愛される鶴川温泉がある。じんわり肌に染み入る湯に、そばを流れる太田川のせせらぎ、鳥たちのさえずりが安らぎの時間を与えてくれる。
温かみのある木造の建物に入ると、経営者の松本豊子さん(64)が「いらっしゃい」と元気な声で迎えてくれた。常連客が99%という知る人ぞ知る温泉。地元住民以外にも九州各地にファンがおり、週末になると長崎県から訪れる人もいる。
階段を下りると、目当ての温泉にたどり着く。泉質は単純温泉でモール泉も含まれており、かすかに硫黄のにおいがする。地下約700メートルから吸い上げた源泉は加水や加熱をしておらず、約42度とやや高め。湯は軟らかく、肌に溶け込むようで、蓄積された疲労の皮が一枚一枚はがれていく感覚だ。
「この地域には周囲に温泉がなく、ここに湯が出たのは奇跡だと思う」。ほぼ毎日通う轟寿直(すなお)さん(79)は笑顔で話す。3年前、農業で腰を痛めた際は、1日に2回湯に入り、治したという。「泉質、温度が素晴らしい。間違いなく町内でトップクラスの温泉だ」
温泉地としては無名の地域にひっそりと存在する温泉。これは地域の宝だ。
( メモ //) 鶴川温泉は大分自動車道玖珠インターチェンジから車で約15分。入浴料は300円(小学生以下は150円)。家族風呂は1人500円。営業時間は平日が午後4時~同9時、土、日曜日、祝日は午前11時~午後9時。火曜日は休み。問い合わせはTEL0973・72・4426。
味わい深いだし 自家製野菜ふんだんに
鶴川温泉には飲食スペースも併設されており、メニューはうどんや丼など15種類。入浴前に予約が必要な「カモ鍋」(2千円)は不動の一番人気だ。
味わい深いだしは北海道産の昆布と3種類のかつお節、みりん、しょうゆを使用したシンプルな構成。紅茶カモのほか、ネギ、白菜、シメジなどの自家製野菜をふんだんに使い、うどんと雑炊で締める。風呂上がりの空腹を満たすボリューム満点の料理だ。「寒くなるこれからの季節には特にお薦めです」と松本豊子さん。