唄げんかの湯 ヒノキの香り心地よく
「おんせん県おおいた」にありながら、温泉がない佐伯市。市中心部から40キロ以上離れた山里に「温泉」ではないものの、県内外からリピーターが訪れる入浴施設があると聞き、向かった。
目指したのは里の駅・木浦名水館「唄げんかの湯」=宇目木浦鉱山。顔に墨を塗り合い無病息災を願う奇祭「すみつけ祭り」で有名な地区の一角にある。赤いのれんが目印だ。施設前の水路には地区を流れる蓮光寺湧水が流れ、色つやのよいコイたちが悠々と泳いでいる。
風呂の湯は湧水をろ過して使っている。浴槽の内側にはヒノキを使用。入浴するとほんのりヒノキの香りが漂い、心地よい。内湯のみで5、6人が入るのがやっとの大きさ。地域おこし協力隊で宇目地域を担当する工藤克史さん(25)は「こぢんまりとした雰囲気がいい。初めて会った人とも自然と会話ができて楽しい」と話す。窓の外に見える自然や聞こえてくる鳥のさえずりも心身を癒やしてくれる。
地区は30世帯ほどしかなく、同館の運営は元気な地区住民が当番制で担当している。「平日は10人来れば多い方かな。貸し切り状態のときも多く、ゆっくりくつろぎたいお客さんが県外からも来るよ」と米田洋一館長(67)。
館内には食堂や休憩スペースもあり、木浦鉱山で採取された鉱物も展示されている。湯上がりの一杯に玄関先の湧水を飲み干せば、「また来よう」と思う魅力が分かった気がした。
メモ
道の駅宇目から国道326号で豊後大野市方面に向かい、「ととろ入口」交差点を左折。県道日之影宇目線に入り、約7キロ。入湯料は大人430円、小学生以下210円。午前10時~午後7時。毎週水曜定休。問い合わせはTEL0972・55・4154。
どこか懐かしい! 地元特産シイタケたっぷり
館内の食堂は入湯客以外も利用でき、食事を目当てに訪れる観光客は多い。看板メニューは、しいたけ飯定食とだんご汁定食(いずれも500円)。
しいたけ飯は地元特産のシイタケをふんだんに使っている。地元で養殖されたエノハの塩焼きの付いたセットは千円。だんご汁定食はゴボウやニンジンなど具だくさんで太めのだんごとよく絡み、懐かしい味がする。
番台や調理など全ての業務を2、3人で担当している。米田館長は「注文が集中すると待たせてしまうこともあるが、ぜひ味わってほしい」と話す。