川のせせらぎ心地よく 益次郎の湯
日田市天瀬町の中心部を流れる玖珠川沿いの天ケ瀬温泉。駅から5分ほど歩くと共同露天風呂の一つ「益次郎の湯」(益次郎温泉)=同町湯山=がある。
「今日は暑いなぇ。調子はどげんな」。常連の森山薫さん(76)の問い掛けに、顔なじみの白髪の老人は「ぼーちぼち」と笑って答えた。
脱衣所と浴槽だけの小さな空間は、地域住民の社交場。たわいもない会話が毎日のように繰り返されている。
辺りは山に囲まれた旅館街の風景が広がり、川のせせらぎが心地よい。肩までどっぷり湯に漬かれば慌ただしい日常を忘れられる。
川に面した何の仕切りもない場所だが、営業時間は午後4時~同10時。「回りから丸見えやけど遅い時間なら恥ずかしくない。混浴なので暗くなって夫婦で来るのもおるとよ」
浴場は天瀬町の湯山区が昔から管理してきた。名前の由来は維新十傑で知られる大村益次郎。天保年間に広瀬淡窓の咸宜園を訪れていた益次郎が、江戸へ旅立つ前に入ったと伝えられている。
無色透明、ほぼ無臭の単純硫黄泉は筋肉痛や切り傷に効くという。75度ある源泉は水で調整する。「おなかにもいいんよ」。常連客の一人が浴槽に置かれたカップを手に取り、ゴクゴクと飲んで見せた。
地区の利用者が多いが、町外の人も使える。市中心部から車で20分かけて通う浦塚正美さん(66)は「ここが一番。福岡からん人も多いよ」と笑顔を見せた。
風呂上がりにぴったりなのが、天ケ瀬温泉が取り組むご当地グルメ。「ゆずシャーベット」は、爽やかな風味とさっぱりした酸味が楽しめる一品。果汁と甘く煮詰めた皮のバランスが絶妙で、口溶けがよい。
トマト農家が発売した商品で、自家製トマトを使った「トマトジェラート」もお薦め。いずれも320円。益次郎の湯から5分ほどの場所にある日田市観光協会天瀬支部(JR天ケ瀬駅横)で購入できる。支部の休憩スペースで食べることができる。
メモ 天ケ瀬温泉は国道210号沿いのJR天ケ瀬駅近く。玖珠川に沿って計5カ所の共同露天風呂がある。益次郎の湯は入浴料100円。隣に犬や猫を洗える施設もある。問い合わせは日田市観光協会天瀬支部(TEL0973・57・2166)。