大分空港（国東市）に向け、大分港西大分地区を出発するホーバークラフトの第１便。定期航路として１５年９カ月ぶりに復活した＝２６日午前６時５７分、大分市駄原
大分市と大分空港（国東市）を結ぶホーバークラフトの定期航路が２６日、運航を始めた。２００９年に別の事業者が撤退して以来、１５年９カ月ぶりの復活。定期航路は国内唯一になる。海原を軽やかに駆ける機体の魅力を、乗り物ファンや旅行客らが堪能した。
大分市駄原の大分港西大分地区「ホーバーターミナルおおいた」では、午前６時５５分発の第１便（定員８０人）が満席となった。同日午前０時から並んで一番乗りし、空港まで往復した大分市高城の介護士、川野凌大さん（２５）は「海上では方向転換以外は揺れも小さく、楽しくてあっという間だった」と興奮気味。
空港から乗り込み、大分市へ向かった東京都大田区の男性会社員２人組は「たまたまネットで就航を知った。観光も兼ねることができてありがたい」。
定期運航は相次ぐ訓練中の事故を受け当初予定から１年４カ月遅れた。運営会社の小田典史社長（５３）は「無事に就航できてほっとしている。ここまでは助走。地域の足、大分の観光の起爆剤として貢献できるよう、猛烈ダッシュしていきたい」と話した。
定期航路は片道３６キロを約３５分で結ぶ。当面は１日４往復。年間４０万人の利用を目指す。
西大分のターミナルとＪＲ大分駅との間では３カ月間、県が無料のシャトルバスを運行する。
■何より求められる安全な運航
県がホーバークラフト航路の復活を表明したのは２０２０年３月だった。インバウンド（訪日客）需要で大分空港の利用増が見込まれる中、県都とのアクセス改善を目指し事業化を打ち出した。
別の事業者が担っていた以前の運航では赤字がかさみ廃止となった。今回は収支を確保するため、船体の購入費などを県が負担し、運営のみを民間に任せる「上下分離方式」を採用。２０年１１月に県と第一交通産業（北九州市）が事業協定を結び、同社が２２年１０月に運航会社として大分第一ホーバードライブを設立した。
当初は２３年度中の運航開始を目指していたものの、操縦訓練で事故が相次ぎ就航は延び延びとなった。「訓練時間の確保」を理由に、ダイヤは予定していた毎日７往復半から４往復に大きく減らしてのスタートを余儀なくされた。
ホーバーの定期航路は国内唯一とあって、観光資源としての役割も期待される。県によると、船体取得やターミナル建設などのために県が投じた費用は約１１２億円に上る。巨額の投資を観光浮揚や利便性向上につなげるためにも、まずは安全な運航が何より求められる。
