とろろ乃湯 時間忘れる“隠れ里”
「こんな場所にあるのか」。初めての人はあまりの山奥で心細く感じるかもしれない。中津市耶馬渓町の耶馬渓ダム横を通り過ぎ、奥へ奥へ。細い道を進むとぽっかりとした空間。山、田畑、川。隠れ里のような雰囲気の中にひっそりとした平屋が現れた。
温泉どころの深耶馬渓と裏耶馬渓の間に位置する。岩本芳男社長(81)の「たぶん出ると思った」という勘で掘ると大当たり。家族や知人で楽しんでいた湯を多くの人に喜んでもらおうと2005年に「とろろ乃湯」(同町山移)をオープンさせた。
地下800メートルから湧出する源泉は無色無臭。アルカリ性単純泉で「しっとりとして優しい。湯冷めしない」と評判だ。露天風呂に入ると目の前には温泉名にちなんだ「とろろの山」。連なるほかの山々や青い空を眺めながら漬かると「あー幸せ」と自然と声が出てしまう。春はサクラ、冬は雪景色など季節を感じることができる。
毎日通う町内の伊藤ケイ子さん(70)は「夜は星が近くて、つかめそうなほど。肌も体(内臓)の調子もいい」とべた褒めだ。県外客も多く、10年来通う福岡県上毛町の横山政治さん(66)は「とにかくゆっくりできる。長湯しても湯あたりしない」。ドライブ中にふらりと訪れた長崎市の志田弥生さん(29)は「たどり着くまでは不安でしたが、気に入りました」と話した。
自然に囲まれた温泉を前に岩本社長は「時間を忘れたい人はぜひ」と笑顔を見せた。
耶馬渓ダム左岸の側道や右岸の県道を経て小杉集落へ。所々に案内看板を設置している。内風呂はヒノキ風呂と石風呂が2週間ごとに男女で入れ替わる。それぞれ露天岩風呂と五右衛門風呂(水風呂)がある。入浴料は中学生以上350円、小学生以下150円。月曜休み。TEL0979・55・2080。
農場直営の地鶏料理 朝取り「卵かけ」もお薦め
岩本芳男社長の本業は養鶏業。併設する「とろろ庵」では農場直営の地鶏料理を味わえる。
放し飼いをしている鶏を使用。炭火焼きやたたき、刺し身、唐揚げ、鍋などさまざまなメニューを用意する。1番人気は炭火焼き定食で1200円。手羽元、もも、ネックの3種類の肉をしちりんで焼きながら味わう。煮ぐい、白ご飯か鶏めしなどが付く。朝取りの卵を使う卵かけごはん(600円)もお薦め。営業は平日は午前11時、土日祝日は午前10時からで、いずれも午後8時まで。問い合わせはとろろ乃湯へ。