みやざき郷温泉 故人が残した地域の宝
国道10号が南北に走り、各種チェーン店舗が軒を連ねる大分市宮崎。周辺の里山には団地がひしめき合い、にぎやかな一角だ。
その中にある昔ながらの静かな住宅地。車の行き違いも難しい入り組んだ道を進んでいくと「みやざき郷(ごう)温泉」のシンプルな平屋が現れた。
昨年5月にオープンしたばかり。ヒノキ造りの脱衣所の先に4、5人入れば満杯の石造りの浴槽がある。源泉掛け流し、泉温43度の透明な湯は塩化物・炭酸水素塩泉。薄い黄緑色が付いているようにも見える。
「冬は、寝る前に体を温めに来るんですよ。完成前から楽しみにしていました」とは、近くに住む岩男光芳さん(65)。少しヌルッとした湯は、一緒に入る孫たちにも好評だという。
この温泉、実は個人が開いた。35年前、温泉好きが高じて自宅の敷地で掘り当てた故・佐藤成一さんが「自治会長だった時に支えてくれた地域に恩返しを」と再度800メートルボーリング。新たな泉源を得た。
しかし開業直前、佐藤さんは病気のため車椅子生活に。湯船に漬かったのは2回だけだったという。「でも、家でお客さんと好きな碁を打ったり、茶飲み話をしたり。生きがいを楽しんでいました」と妻のヨシコさん(82)。
今年8月上旬、佐藤さんは89年の生涯を閉じた。「温泉のおかげで顔見知りが増えた。地域の宝を残してくれた佐藤さんに感謝している」と岩男さん。娘・岩田明美さん(59)と切り盛りするヨシコさんは「採算は二の次。細く長く続けたい」と笑顔で話した。
みやざき郷温泉は、JR豊肥線敷戸駅から車で約5分。国道10号の宮崎南交差点を西に入ると、所々に案内看板がある。営業時間は午後2時~同10時。男湯と女湯があり、入り口の料金箱に100円硬貨3枚(大人1人分)を投入するとドアロックが解除される。問い合わせは佐藤さん(TEL097・569・2040)。
大人気、たこ焼きパン「安全、おいしい」老舗の味
みやざき郷温泉から車で約3分。光吉台の住宅地にあるパン店「カンパーニュ」は1984年にオープンした。「安全でおいしいパンをリーズナブルに」をモットーにしている。
約100種類の大半は100円台。もちもちとしたパンの中にタコと刻んだキャベツ、マヨネーズを入れ、たこ焼きソースとかつお節をかけた「たこ焼きパン」(118円)は、200個が午前中で売り切れる。
川島誠司専務(42)は「大分市内40カ所への配達もあるので休みは年に3日。大変だけど、長年通ってくれるお客さんのために頑張っています」。営業時間は午前6時半~午後7時。TEL097・568・5448。