杉本 博樹さん 臼杵市六ケ迫・俵屋旅館
臼杵市に、江戸時代から続く温泉がある。1736(元文元)年、白鷺が痛めた足を浸して傷を全快させた伝説から、付いた名前は「鷺(ろ)来(く)ケ(が)迫(さこ)温泉」。別府八湯温泉道名人会理事の杉本博樹さん(41)は「7〜8年前に来て以来、友達に勧めまくっている温泉です」と胸を張った。
泉質は含炭酸ナトリウム・カルシウム炭酸水素塩・塩化物泉。屋外には1750(寛延3)年にできた薬師堂がある。飲泉でき、地元住民でつくる臼杵六ケ迫鉱泉保存会が管理、保全している。飲泉ポイントはここと、白鷺を祭った旅館内の祭壇横。「温泉、いただきます!」。ぐっと飲み干した。炭酸のシュワシュワ感がたまらない。
お目当ては22度前後の冷泉「源泉 鷺湯」。酸化鉄の成分が沈殿しており、底をかき混ぜると湯の色が茶褐色からオレンジっぽい赤色に変化する。旅館6代目の斉藤祐二さん(44)は「源泉は生もの。日によって状態は違う。今日はいいですね」。期待が高まる。
鷺湯と細い通路を挟み、加熱した熱め、ぬるめの2種類の温泉があり、先に入って温まってから鷺湯を楽しむのが作法。温泉は「引っ掛かってくるような感触です」。
通路をぬらさないように体をよく拭き、いよいよ鷺湯へ。熱いお湯とはまた違い、肌がきゅきゅっとする清涼感を楽しめる。「ひゃー、気持ちいい!」。赤色のもととなる酸化鉄の泥を底からすくい、顔中、体中に塗りたくる。「上質な泥。他にはないですよね」。顔がほころんだ。泥を手のひらに塗り、壁にぺたっ。来た印を手形で残した。
「おんせん県の宝。ぜひ多くの人に訪れてほしい」とアピールした後、一つ付け加えた。「泥は持ち帰らず、その場で楽しむのがマナーですよ」
すぎもと・ひろき 別府八湯温泉道は7巡。福島県や栃木県の温泉ラリーも完走した。奥豊後温泉郷の初代マイスター。4月から別府市在住。NPO法人スタッフとして子ども温泉道の普及などをしている。
俵屋旅館の立ち寄り湯は中学生以上500円、小学生以下300円。受け付けは午前11時から午後5時まで。サウナは土日祝のみ。問い合わせはTEL0972・62・3526へ。