川登和紙 唯一無二の卒業証書
臼杵市野津町の川登地区は、かつて和紙作りが盛んなところだったという。それが時代の変化にともない、1965年頃を最後に川登和紙の生産は途絶えてしまったそうだ。現在は地域の伝統学習として川登小学校で和紙作りが行われている。
地域住民が先生役となる和紙作りは、地域の一大イベントだ。原料となる楮の木を伐りだすなど和紙作りの工程は多岐に渡る。指導者の長田大輔さん(55歳)は「ここでの和紙作りは地域の人が子供たちを育てていくこと」と語る。取材を通して、和紙作りが地元の文化や地域愛を紡いでいっているように感じた。
川登小学校は全校生徒数が22名で、そのうち6年生は5人である。6年生は自分で作った和紙が唯一無二の卒業証書となる。卒業式の日、卒業証書を手にした生徒は、みな晴れやかな表情をしている。卒業証書には、地域の愛情が詰まっていることを知っているからだ。この地域で育ったことに誇りを感じている卒業生の姿を見て、和紙作りの取り組みが地域総出で行われている意味が分かったような気がした。
(日本文理大学経営経済学科4年 今村優菜)