いとしの近代建築 別府市編
残念ながら失われてしまった建築物も多いが、それでも県内の中では数多くの古くてステキな建物が残る別府市。ちょっと歩けば街と一緒の時間を重ねてきた懐かしさと安らぎをどこか感じさせる建物と出合える。歩き疲れたらもちろん近くの温泉でひと休み。
別府市公会堂 建設当時の姿よみがえる
郵便局や電話局などを数多く手掛けた建築家吉田鉄郎が、スウェーデンのストックホルム市庁舎を参考にして建てた。市内に二つある吉田建築のうちの一つで外観はいたってシンプルながら眺めていても不思議と飽きない。県内最古の鉄筋コンクリート造りの建物だったが改修され、建設当時の美しい姿となってよみがえった。内装も当時のデザインを基に復元され、レトロな空間が広がる。
【建築年】1928(昭和3)年
【設計】吉田鉄郎
【所在地】上田の湯町6の37
旧野口病院管理棟 印象的な「とんがり屋根」
住宅街にたたずむ赤いとんがり屋根が印象的な洋館。とんがり屋根のある玄関部分を中心とする左右対称のファサード(正面)を持ち、中庭を取り囲むように棟が延びる。グレーのモルタルスペイン壁の上部をハーフティンバーとしているのが特徴で、軸組のティンバー(木材)を白しっくいで埋めて仕上げている。野口病院は移転新築しており、現在は使用されていない。外観の見学は可能だが、意外と車の通りが多いので見とれ過ぎに注意を。国の登録有形文化財。
【建築年】1922(大正11)年
【設計者】不明
【所在地】野口中町6の33
朝見浄水場 市民の生活支えた“重み”
1917(大正6)年に竣工(しゅんこう)し、今年でちょうど100年となる県内初の近代的な浄水処理施設。施設内に四つ、少し離れて八幡朝見神社の近くにある量水室を含めて五つの国の登録有形文化財がある。配水池以外はどれも小ぶりな建物だが、球状の屋根が印象的な集合井(せい)室、正面から見ると王冠を載せているかのような量水室などそれぞれ独特の外観を持つ。ろ過された水を集めていた集合井室と、各家庭に送られる水を計量していた量水室は現在は使用されていないが、どの建物からも長く市民の生活を支えてきた歴史の重みが漂う。問い合わせれば見学も可能。
【設計者】不明
【所在地】朝見2の4002の2