いとしの近代建築 聴潮閣
心ときめくレトロな建物に巡り合える街、別府。今回はそんな別府を代表する近代和風建築の一つ「聴潮閣」を特集する。
玄関棟と座敷棟からなる母屋は外観は純和風なたたずまいだが、中に入れば和と洋が溶け合ったモダンな造り。実際に生活の場だっただけに、どの部屋も華やかというよりは落ち着いた雰囲気で品格がある。思わずため息が漏れるほど見事な洋館の応接間、日本初のステンドグラス作家、小川三知が手掛けた浴室のステンドグラス時代を物語る調度品の数々―。
建物が"休眠"状態になって2年余り。管理する聴潮閣企画室室長の高橋鴿子さん( 83 )は「今後のことは全くの未定」と言う。昭和初期の文化の薫りを静かに伝える聴潮閣が、これらもこの地で時を重ね続けられるように切に願う。
【建築年】 1929(昭和4)年
【設計者】不明
【所在地】青山町9の45
大分を代表する政財界の実力者だった高橋欽哉が建てた入り母屋造りの木造2階建て(一部平屋)と洋館から成る住居兼迎賓館。「聴潮閣」の名の通り当初は浜脇の海辺にあったが1989 (平成元)年、解体して現在地に移築した。2001年に国の登録有形文化財に指定され、「聴潮閣高橋記念館」として一般公開。13年からは全国を旅しながら詩や絵を制作した佐藤渓の作品を展示する「佐藤渓美術館」も館内に開設したが、15年いっぱいで美術館も併せて閉館した。現在、一般には公開されていない。