「つくりたいという欲求が大切」と話すファブラボ大分のマスター、豊住大輔さん=大分市中央町
大分市中心部、中央通り沿いにあるビルの一室に3Dプリンターやレーザー加工機などのデジタル工作機械が並ぶ。あらゆる人があらゆる物をつくれる工房「FabLab(ファブラボ)Oita」のマスターを務める。
ファブラボとは、暮らしに密着したり、アイデアを生かしたものを自分たちの手でつくる市民工房と、その世界的なネットワークを指す。「パソコンで形状のデータを入力すれば機械がつくってくれる。データのやりとりだけで世界中で同じものができる」。職人経験がない人でも取り組めるものづくりの新たな潮流をこう説明する。
インターネット上にはデータの作り方の情報があふれ、意欲があればどこでも“制作”できる時代になった。ラボでは利用者が持ってきたデータを否定しない。「つくりたいという欲求が大切。達成感があれば、のめり込んでくれる」と裾野の広がりを期待する。
一方で、職人の技術や経験によってつくられる製品もなくてはならないと考えている。「肌感覚で生み出されたものにはデジタルでは表現できない良さがある。お互いが補完できるような社会になればいい」
ラボには学生や企業人、公務員、アーティストなどさまざまな人が集う。企業が使う場合でも他の利用者を立ち入り禁止にしない。「ごちゃ混ぜに集まっているからこそ、新しいものが出てくる」。企業が出来たての試作品を見てもらって改良点を尋ねたり、絵のうまい学生に仕事が舞い込む場面を目にしてきた。
本年度からは学校現場への出張にも力を入れ、自分でつくることの面白さを伝えている。「ものづくりは格好いいと思ってもらいたい」。興味を持った子どもたちがラボの常連になることを楽しみにしている。