和食の調理師から竹細工の職人に転身し、今春から別府市弓ケ浜町に竹細工の工房を兼ねたショップ「ｃｏｔａｋｅ（コタケ）」を営んでいる。竹工芸家としての作品づくりや、商品の仕入れ、販売、経理などを一人でこなす。「お客さんの喜ぶ顔が見たい」という思いが原動力だ。
　北浜で旅館を営む両親を見て育ち、自然と接客業に関心を持った。別府青山高校を卒業後、調理師の免許を取り、家業の旅館内にある「とよ常」で名物の天丼を作っていた。カウンター越しに観光客から「どこか見るところはないか」と聞かれるたび、市竹細工伝統産業会館（東荘園）を紹介していた。
　転機は５年前だった。「観光客に勧めるなら、自分も行ってみよう」と初めて産業会館へ。職人が作る竹細工の美しさに衝撃を受けた。「これまで漠然と抱いていた竹細工のイメージとは全く違う。別府生まれなのに、竹の良さを知らなかった。みんなに知ってもらいたい。職人になろう」と決意した。
　産業会館の教室に１年間通った後、市内の県立竹工芸訓練センターで２年間学んだ。佐藤さんが現在つくる作品はイヤリング、ピアス、ネックレスなどアクセサリーが中心。子どもと一緒に見た植物の発芽や、伝統工芸品などからヒントを得て、独自のデザインに結び付けている。
　竹を割り、部材となる竹ひごを作ることが重要な作業という。「どれだけきれいに竹ひごを作れるかが、作品の良しあしにつながる」と職人の顔を見せる。「ものづくりは苦しい。神経を削ってやっている。でも、お客さんから『すごくかわいい』と喜んでもらえることが励み。今後も細く長く続けていきたい」と語った。