「ジェイ・パック」の工場で従業員と話し合う小野尚子さん=由布市挾間町三船
大分銘菓「ざびえる」の黒い箱。ベロアのような表面は気品が漂う。作るのは由布市挾間町三船の紙箱製造「ジェイ・パック」。紙に繊維を付着させるフロッキー加工の技術を持つ。他にワンタッチで組み立て可能な箱など特許品もある。
その副社長と営業部長を兼務。同社の紙箱作りについて「手作業が多く、機械が補助している感じ」と説明する。工場では女性十数人が働き、各工程で職人技が光る。例えば、フロッキー加工直後の紙はスペースが限られる中、わずかな間隔を空けてぎっしり並べ乾燥させるといった具合だ。
これまでの道程は平たんではなかった。父・丈八さん(72)が社長の同社に27歳で入社。営業を担当したが、当時は食品の異物混入問題などの影響で包装にも高い品質が求められた。視察した他社の厳しい管理体制に圧倒され、「社会から必要とされる会社にならないと」と危機感を持った。
整理整頓の推進、不良品の原因検証…。「物作りは『もっといいものを』というこだわりの共有が必要だ」。品質向上を従業員と目指し、徐々に取引先から認められるようになった。
箱は中身を包む脇役のようだが、「私たちは捨てられるために物を作っているわけではない。高い品質や洗練されたデザインで、中身を消費した後も使いたくなる箱を作りたい」。
今年からはネットショップで自社ブランド「8=PAPER WORKS」を展開。ビビッドな配色を採用した箱などを販売し、「作り手がいいと思える箱作り」にも取り組み始めた。
他社と開発した製品の収益の一部で、人と動物の共生を図る活動も支援。「物作りを通して買う人が社会の課題に気付いたり、社会に貢献するきっかけを生むことができれば」。新たな挑戦にも意欲的だ。