ゲストハウスには旅行者や地元の人など、さまざまな人が集まる。談笑する子安さん(左)と堀場夫婦
「今度、そこの空き店舗に花屋さんがオープンします」「竹田の雑貨を集めた地域おこし協力隊OBのお店はこちらです」―ハピカムに出演した「まちづくりたけた」取締役統括マネジャーの子安史朗さん(42)が商店街を歩くと、あちこちから声を掛けられる。
同市竹田町に4月、ゲストハウス「たけた駅前ホステルcue」がオープンした。東京でサラリーマンをしていた堀場貴雄さん(37)、福岡で小学校教諭だったさくらさん(38)夫婦が運営する。2人は地域おこし協力隊として竹田で働き、定住した。
コンセプトは城下町の滞在施設。古民家をリノベーションした。チェックインの際に、地図が手渡される。手書きの情報がびっしりと書き込まれている。風呂は駅横の竹田温泉「花水月」。お客さんの希望に沿って郷土料理や焼き肉、2次会のスナックまで店を紹介する。「朝の散歩は愛染堂から歴史の道がお薦めです」とも。
町のコンシェルジュを目指す貴雄さんは「町の人たちと深く、長く付き合いたい。日増しに面白くなっています」と笑み。子安さんは「お金が全てではないが、地域の経済を回す仕組みは大切。お金以外の価値観で仕組みをつくりたい」。移住者と地域が融合しようとしている。
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エルメスのショーウインドーやディズニーキャラクターとのコラボレーション―国東市安岐町のアキ工作社が製造する「d―torso(ディートルソー)」は輪切りにした段ボールの構造美で世界と勝負する。
「まさかこんな田舎で作っているなんてと驚かれますよ」と社長の松岡勇樹さん(54)。2009年から現在の旧西武蔵小学校を本社・工場として活用する。
11年夏、オランダ人アーティストのテオ・ヤンセン氏を招くと、グラウンドに大勢の人が集まった。地域の学校という場の力を実感した。14年には現代音頭による盆ダンス「時祭(ときのまつり)」を開催。「半島に息づく伝統文化も、最初は案外こんな感じでは」と感じたという。
松岡さんは同町生まれだが、親の仕事の関係で3歳で離れた。大学卒業後、東京で設計の仕事をしていたが、d―torsoの事業化を機にUターンした。
国東で暮らすと見えてくるものがある。「国東の歴史風土と対話しつつ、事業を通して新しい暮らし方を提案したい」と「国東時間」を提唱した。週休3日制がクローズアップされるが、「単に休みではなく、自分自身を高めるために時間を使ってほしい」と願う。
来年の創立20周年を機に、会社のリ・ブランディング化を進めている。キーワードは「地域共同体の幸せ」。国東の企業として、働く人たちはもちろん地域の豊かさをも追求していく。