リノベーションに魅せられた。広場予定地に立って打ち合わせをする河野功寛さん(左)と先輩の東郷哲史さん=佐伯市船頭町
ハピカムに出演した佐伯市職員、後藤好信さん(34)のリノベーション活動は空き家活用のみならず、まちづくりの手法として注目された。2013年の空き家実態調査で県内一空き家数の多かった佐伯で今、何が起きているのか。
同市が移住相談窓口を開設したのは昨年4月。市地域振興課移住・定住推進係が4人体制で移住希望者らの相談を受け付ける。空き家バンクは市で直営したこともあったが、売買に関与できないため、現在は佐伯宅地建物流通センターに委託する。
実態調査では、市内の空き家数は2439戸だった。緊急雇用で人を雇い、本格調査を実施した。本気で取り組んだ分だけ、数が突出したという。「利活用が見込まれる空き家は1477戸。取り壊しが約千戸。本年度中に市空き家等対策計画を策定し、方針を示したい」と担当の高木哲也さん。空き家は移住者だけでなく、病院に通いやすくするなど高齢者らの住み替え需要もあるという。
空き家のリノベーションの動きについて、同係総括主幹の古川京子さんは「片付けや床張りなど、仲間同士で楽しんで活動している。空き家が地域の拠点に生まれ変わり、人の輪が広がる。地域が元気になっています」と話す。
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まちづくりユニット「DOCRE(どーくり)」で後藤さんと一緒に活動するのは市職員の河野功寛さん(29)だ。2人は旧市街の船頭町を活動拠点とする。旧時計店を改修した後藤さん宅の近くで、河野さんは旧旅館を購入した。
名付けて「平岡屋リノベーションプロジェクト」。敷地面積は160坪と巨大。中央にあった建屋3分の1程度を解体して広場にすることにした。残りの建物を住居や作業スペースとして活用し、年内には完成予定。総工費も一般的な新築住宅以内に収まるそうだ。
河野さんは「5分程度で歩ける町内を街歩きが楽しめるスモールエリアとして再生したい。そのためにも広場のようなスペースが必要です」と説明。自身で構想図を描き、大分大学工学部の先輩で北九州市を拠点にリノベーションを請け負っている東郷哲史さん(31)=別府市出身=が形にしている。東郷さんは設計、大工、塗装、左官など、リノベーションに必要な仕事を何でもこなし、必要に応じて多くの人の手が入ってくる。
DOCREの活動を通してリノベーションの輪が広がっている。ネコの島として売り出し中の深島に「深島食堂」ができ、屋形島ではゲストハウスの建設も進む。佐伯の歴史ある街並みや豊かな自然と調和した暮らしを求めるなら、景観に溶け込んだ空き家に価値を見いだすのも自然だろう。