ひと、まち、暮らし、文化――。変わりゆく泉都・別府市のリアルな「素顔」を描写した長期連載。
※大分合同新聞 夕刊社会面 2007(平成19)年10月22日~2009(平成21)年3月14日掲載
夏が来た。 待ちに待った季節だ。 花火、浴衣、扇風機、蚊取り線香、入道雲、夕立、せみ時雨……。いろいろ連想することは多い。 生粋の別府市民なら、そこに「栄屋さかえや」が加わる。 ...
ちょっぴり甘め。やや濃い口の味付けが白米に合う。 バラエティーに富んだメニューは70種余り。 オレンジ色のエプロンを身に着けた地元の「お母さん」たちが、陳列ケースの奥の厨房ちゅうぼうで腕...
錯雑とした空気が妙に落ち着く。 座敷、テーブル席、カウンター。そこに陣取った老若男女が「ガチン」とジョッキを打ち鳴らす。 大衆居酒屋「二十八萬まん石」(元町)。...
生まれ育ちが別府なら、幼少時代に両親、あるいは祖父母に連れられて買いに来た人は多いはずだ。 とらや(楠町)。 泉都を代表する大判焼き、たい焼きの老舗である。 ♨ 昭和29年創業。 旧中心部の南部地...
できるなら、あまりヒトには教えたくない。 知る人ぞ知る家庭的かつ良心的な大衆食堂。 何より「味」がいい。そのことは、店に立ち寄るタクシードライバーの多さが証明している。 今夏で開店25周年の食堂「小梅」(新港町)。 安定感...
どちらかと言えばファジーな数字だ。 NTT西日本が今年1月末現在の情報をまとめた電話帳「タウンページ」。 その職業名・サービス名一覧から「たこ焼き店」をリサーチすると、別府市には10軒が名を連ねている。 これって……多いのか。...
ヒット曲が相次いだ。 北の宿から。およげ!たいやきくん。ペッパー警部。木綿のハンカチーフ……。 泉都・別府が生んだシンガー・ソングライター大塚博堂が「ダスティン・ホフマンになれなかったよ」でデビューしたその年――。 旧中心部の...
西の空が茜あかね色に染まった。 汗が噴き出る熱帯夜。 淡く優しい竹ぼんぼりの明かりが、行き交う人波をほのかに照らす。 泉都の盛夏を盛り上げた別府夏の宵まつり。 海門寺公園(北浜2...
夏空に、意志の強そうな入道雲が浮かんでいる。 作家・椎名誠の言葉を借りれば、「ごんごんと風にころがる雲をみた」。 そんな高原の昼下がり。 陸上自衛隊・十文字原演習場の湯山口に、今日も、古びた軽ワゴン車が「営業中」のパラソルを開...
あ、開いちょん! おばちゃん、来たで! 甲高い声を響かせ、「上人っ子」たちがやって来る。 握り締めた小銭。キョロキョロと動く瞳。 頭の中で足し算、引き算を繰り返しながら、慎重に選んでは手に取り、戻しては別の商品を必死に探す...
お昼時。恐らく、ここは県内で最も込み合う繁忙の場所だろう。 Tシャツ、ポロシャツ、ジーパン、ショートパンツ、スニーカー、サンダル。 世界81カ国・地域の学生たちが、多種多様のいでたちで集結する。 雰囲気はさながら異国のフードコ...
夜の9時。 北浜2丁目の民間駐車場に、1台のピックアップトラックが到着した。 エンジンを止める。赤ちょうちんに灯をともし、折り畳み式の簡易テーブルを広げて丸いすを並べる。 準備は整った。 屋台ラーメン「コスモラーメン」の”...
何でもそろう。 湯の街の「暮らし」に触れたければ、まずは、JR別府駅のガード下に足を運ぶべきであろう。 流川通りをまたぎ、中央町と秋葉町を貫く延長およそ350メートルの1本道。 「べっぷ駅市場」。そのフトコロは深い。 ...
泉都・別府市は「景観」の街だ。 東西約13キロ、南北約14キロ。...
太陽が鶴見岳の向こうに沈んでいった。 「V」の字に列を組んだ野鳥の群れが、南から北へ、湯の街を横断している。 薄明。...
扇山に登った。 その日の天候は曇り後晴れ、所により一時にわか雨。 下界から眺める頂は、厚い鉛色の雲に覆われていた。...
晩夏。セミたちが懸命に鳴いている。 そのはるか向こうから、踏切の音が聞こえた。 やがて列車が近づき、通り過ぎてゆく。...
ヘリコプターに乗った。 目的は一つ。「海の上から市街地を眺めたい。...
「慣れ」とは不思議だ。 そのニオイを初めてかいだ人の多くは、みけんに縦のシワを寄せる。...
雷鳴がとどろいた。 激しい夕立。火照った街並みをスコールが洗う。 雨雲が過ぎ去ると、カメラマンが三脚を手にした。...
夕暮れ時。上人ケ浜公園のパーキングに車を止めた。 カモメが頭上で旋回している。紺ぺき色に染まりゆく空。飛行機雲が白い線を記している。 潮騒が耳に優しい。...
春。この道はサクラ吹雪が舞う。それはそれは艶あでやかだ。 夏。木々は緑に染まる。...
やれやれ、今日も終わった。 カーラジオが県内のニュースを伝えている。 信号が変わった。...
この土地の「主あるじ」と言っていいだろう。 別府公園の面積は27・3ha。...
掘れば出てくる。やっかいな石でもある。 数百万年前から地殻変動を繰り返し、活発な火山活動で扇状の街・別府は生まれた。...
水田が幾重にも連なる棚田。その美景を模して、浴場を階段状に配した温泉施設を杉乃井ホテルでは棚湯と称す。...
どこからか、しょうゆを煮立てるニオイがした。 夕飯時。野良猫が警戒心を緩め、右手で顔を洗っている。 「じゃあね!」 「バーイ!」 下町生まれの地元っ子たちが駆けていった。...
発車のベルが鳴った。人けまばらなJRの西大分駅。 市井の人々を乗せた鈍行の普通列車は、ゆっくり、海岸線の線路を西へ向かった。...
この場所に立つと、なぜか不思議と心が洗われる。 何も考えない。黙って目の前の「緑」と「青」を眺める。...
中年の男2人、思い立って志高湖(東山)のペダルボートに乗った。...
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