豊後高田市は全国有数の移住先進地。田染の庄でおばあちゃんに声掛けする移住者の栗原浩二さん(左)
空前の移住ブームが到来した。2016年度に自治体の移住者支援制度を活用して大分県内へ移住したのは768人。5年前の5・6倍と急増している。
東京・有楽町の交通会館8階。「ふるさと回帰支援センター」には首都圏の移住希望者が続々と集まってくる。都道府県はそれぞれブースを構え、魅力や移住施策を競い合う。大分県ブースの移住コンシェルジュ、伊藤彩子さん(大分市出身、鎌倉市在住)は「来場者の人気移住地で大分県は全国7位。地の利がある関東周辺を除けば全国トップレベル。大分をPRしますよ」と張り切っている。
県の長期総合計画「安心・活力・発展プラン2015」で地方創生の重点を置くのが「移住・定住対策」。I、U、Jターンだ。昨年度の移住者768人は19年度の目標値600人、24年度の同750人を初年度で上回った。県まち・ひと・しごと創生推進室は「海、山、温泉などの自然はもちろん、大分には移住者を受け入れる素地がある」と分析。都会から地方へと向かう大きなうねりをつかもうと積極的に施策を打つ。
移住先進地として全国的に知られる豊後高田市。昨年は市人口が社会増になるなど、結果が目に見えてきた。空き家バンクや移住奨励金など、きめ細かな支援制度や、起業、農業、企業への就職など多様な働き方までサポートする。川口達也市地域活力創造課長は「希望者の6割が30、40代。移住者が地域づくりを担うなど、移住が傍流から本流になりつつある」と話す。
昨年度の県内市町村別移住者数は、日田市172人、豊後高田市166人、臼杵市69人がベスト3。不動のトップ・豊後高田市を日田市が抜いた。
県は昨年度から、福岡でも東京並みに移住相談会を開催したり、移住サポーターを配置して福岡対策に力を入れる。中山和充県福岡事務所長は「大分の高校生の進路先として福岡志向が強い。若手県出身者のUターンや、福岡からの移住も潜在需要がある。日田は知名度もあり、相談会に日田市が必ず出席するなど、うまくマッチングできているのでは」と見ている。