第二次世界大戦中、日本は約8千キロ離れたアメリカ本土に向けて、紙の風船に爆弾をぶら下げた気球型の「風船爆弾」を飛ばした。秘密裏に進められたことから全容を知らぬまま製造に関与した人々も多く、加害の実態と当事者意識の乖離(かいり)がもたらす教...
大分県の2024年度の農林業での鳥獣被害額が23年度比1600万円増の1億5700万円であることが公表された。イノシシとシカの捕獲頭数は全国トップクラスだが、狩猟免許所有者の約7割が60代以上と高齢化が進む。後継者育成や捕獲機器による労力...
政府は地方創生の今後10年の指針となる基本構想を閣議決定した。「地方創生2・0」と銘打つ石破政権の看板政策だ。 安倍政権が打ち出した地方創生は、文化庁の京都移転など数えるほどの成果しかない。急速な少子高齢化への対応、人口減少への歯止め...
カナダで開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、イスラエル・イラン紛争への対応を理由に米国のトランプ大統領が途中退席し、首脳宣言のとりまとめを見送って閉幕した。 中東情勢に関しては、攻撃を仕掛けたイスラエルの「自衛権」を認め、イ...
石破茂首相とトランプ米大統領が訪問先のカナダで会談した。米国の高関税政策を巡る交渉で合意に達しなかった。焦点となる自動車関税で折り合えなかったためだ。 閣僚協議の継続で一致したものの、トップ会談の節目を逃したのは残念だ。しかし安易な妥...
米政府が日本製鉄によるUSスチール買収計画を承認し、1年半にわたって難航してきた大型買収がようやく決着する見通しになった。 USスチールを傘下に収める日鉄は、140億ドル(約2兆円)を買収に投じ、完全子会社にする。製鉄所の設備などに1...
年金制度改革法が成立した。基礎年金(国民年金)の給付水準の底上げを巡って自民、公明、立憲民主の3党が修正で合意した将来的な実施は付則に明記された。 5月20日に衆院で審議入りしてから1カ月足らず。議論が十分に尽くされたとは言えない。3...
今国会では最後になる与野党の党首討論が開かれ、国民生活を直撃する物価高対策を中心に論戦を交わした。 各党を率いる立場から物価安定に向け持続的で実効性ある方策を示せるかどうかが焦点だった。だが、自民党総裁の石破茂首相や立憲民主党の野田佳...
イスラエル軍がイランの核関連施設や軍事施設を空爆した。イラン中部ナタンズのウラン濃縮施設も標的となり、施設から黒煙が上がるなどの被害が確認された。核施設破壊は暴挙であり、決して容認できない。 国際社会は、イスラエルの暴走阻止へ最大限の...
列島を震撼(しんかん)させた2008年の大分県教委汚職事件はあす14日で発覚から17年となる。 不正の背景には大分特有の「色濃い仲間意識」があった。その排除目的で導入した小中の民間人校長は本年度から採用を取りやめ、改革の目玉施策の一つ...
兵士が市民に銃を向ける事態を招いてはならない。米政府は不法移民取り締まりを巡る西部カリフォルニア州ロサンゼルス市での抗議活動に対応し、同州兵に加え海兵隊員を派遣した。抗議デモ隊の一部が暴徒化したのは事実だが、軍の出動が必要なレベルではなく...
スーパーやドラッグストアの店頭に大量の備蓄米が積まれ、小泉進次郎農相を囲む人だかりができる。コメを巡るニュースが連日報じられている。 全国のスーパーで売られるコメの平均価格が2週連続で低下した。備蓄米をきっかけに、コメの価格が下落に転...
東京電力福島第1原発事故を巡り、東電旧経営陣に会社への賠償を求めた株主代表訴訟の控訴審判決があった。東京高裁は13兆円余りの支払いを命じた一審東京地裁判決を取り消し、株主側の請求を棄却した。訴訟では▽巨大津波地震を予見できたか▽主要建屋な...
2024年の日本人の出生数は68万6061人と初めて70万人を割り込み過去最少を更新した。女性1人が生涯に産む子どもの推定人数「合計特殊出生率」も1・15と過去最低を記録。少子化は深刻の度を増している。 その中では、婚姻件数が48万5...
大分県で初となる県立の夜間中学が来年4月、大分市内に開校する。関心がありながら、年齢や生活事情などでためらっている人もいるだろう。「学ぶことで自分に自信がついた。悩んでいる方は勇気を持って一歩踏み出してほしい」とは、熊本市の夜間中学に通う...
中小企業の倒産が全国的に高水準で推移している。大分県の2024年度の企業倒産件数(負債額1千万円以上の法的整理)も08年以来、16年ぶりに70件を超えた。資材価格の高騰や人手不足など経営環境は悪化の一途をたどる。地場中小の事業立て直しに向...
韓国の新大統領に革新系の李在明(イジェミョン)氏が選出された。保守系の尹錫悦(ユンソンニョル)前大統領によって改善した日韓関係は、新政権下で不確実性が高まっている。 しかし、北東アジアを取り巻く地政学的な変化と米国の対外姿勢の転換を考...
プロ野球の長嶋茂雄さんが89歳で死去した。巨人の選手、監督としてプロ野球隆盛の原動力となった。戦後日本最高のスーパースターだ。世代を超えて愛されただけに喪失感は大きい。 豪快な打撃、空振りした時のオーバーアクション。三塁手としての華麗...
教育の独立と言論の自由に対する抑圧だ。米国のトランプ政権は、大学生らによるイスラエル政府への抗議デモ行動を理由に、世界有数の教育機関であるハーバード大学に対し留学生受け入れ資格の取り消し措置を発表した。 地元の連邦地裁が措置の一時停止...
警視庁公安部が捜査した事件で外為法違反罪に問われ、初公判直前に起訴が取り消された機械メーカー「大川原化工機」の社長らが、冤罪(えんざい)を生んだ捜査機関の責任を追及した訴訟の控訴審判決で、東京高裁は警察・検察側に賠償を命じた。 一審・...
東京都立川市の市立小学校に男2人が侵入し、教室などで暴れて教職員5人を負傷させる事件が起きた。学校の安全が脅かされた事件に対し、危機管理体制の徹底が求められる。今回は保護者が学校の対応に不満を抱いて事件に至った一面もあり、両者間でトラブル...
大分県議会と県内18市町村議会の2025年第2回定例会が6月から順次始まる。県議会は1期目の任期を折り返した佐藤樹一郎知事(67)の県政運営を「中間査定」する討議の場となり、春の市長選を経た5市は初の本格論戦を迎える。行政の監視責任を負う...
兵庫県の斎藤元彦知事を元県民局長(故人)が内部告発した問題は、知事が元局長の私的情報の漏えいを指示した可能性が高いと指摘される異様な事態に発展した。トップとして県政を担っていく資格があるのか、根底から揺らいでいる。 元総務部長による情...
自民、公明両党と立憲民主党は年金制度改革法案の修正で正式に合意した。焦点だった基礎年金(国民年金)の底上げ策を政府、与党は法案から削除していたが、立民の要求に沿って復活させる形で折り合った。底上げ策の将来的な実施を法案の付則に盛り込む。 ...
選択的夫婦別姓制度の導入を巡り、今国会では結論が先送りされる見通しとなった。立憲民主党は、1996年に法相の諮問機関・法制審議会が制度導入に向け答申した民法改正要綱を基に民法改正案を提出、野党や与党の一部に協力を呼びかけた。衆院で多数の野...
店頭での販売価格を目標にした値下げ策は功を奏するだろうか。 農相に就任したばかりの小泉進次郎氏が、政府備蓄米の放出を巡る新たな対策を打ち出した。小売店での価格を5キロで2千円程度にするという。消費者が手に取る具体的な値段に照準を合わせ...
世界が直面する危機の深刻さを、数字が浮き彫りにした。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が発表した2024年の世界の軍事費(支出、一部推計)が過去最高を更新した。総額は前年比9・4%増の2兆7180億ドル(約390兆5...
国の特別機関である日本学術会議を特殊法人にする法案が衆院を通過し、参院で審議が始まる。 衆院の審議では結局、機能強化の道筋も法人化しなければならない理由も明確にならなかった。 特殊法人になれば2020年にあったような首相による会員...
台湾で民主進歩党(民進党)の頼清徳総統の就任から1年となった。中国は頼氏を「独立派」と批判して武力威嚇を繰り返す。外交面では台湾にとり最重要の米国のトランプ政権が台湾に露骨な不満を示し始め、立法院(国会に相当)では野党との対立が激化してい...
政治家の舌禍が絶えない。国内は各地で痛ましい事件・事故が相次ぎ、海外では偏狭なナショナリズムによる分断と対立が深まる。他者への配慮に欠いた言動が何をもたらすか。玖珠町出身の社会教育者・久留島(くるしま)武彦(1874~1960年)は、言葉...
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