「陸上競技に関わりたいと思ったんです」 そう話したのは、11月に開催される大分国際車いすマラソンで新コースの検定を担当した国際道路コース計測員の苅込英昭さん(64)。世界記録や日本記録の土台となるコースを測る専門家だ。 6月末の日曜日、苅込さんは専用の計測器を備えた自転車で現地を走った。私は取材を通じてさまざまな話を伺った。国際資格を持つ計測員として全国各地を飛び回る人だが、驚いたことに、自分の技術や経験を誇るような話はほとんど出てこなかった。 代わりに何度も口にしたのは、選手のことだった。 「大会の主役は選手です」 今年からスタートとフィニッシュが同じ場所になることについても、「ゴール後に選手や車いすを移動させる必要がなくなり、ストレスがかなり軽減されると思います」とまず選手への配慮を挙げた。さらに、運営が効率化されることや、観客が同じ場所で何度も選手を応援できることも新コースの利点として語った。 記録について尋ねると、「前回コースでも世界新記録が出ていますが、新コースはアップダウンの高低差が少なくなっています。大会当日のコンディションが良ければ、記録更新も期待できると思います」と話した。そこでも主役は、自分ではなく挑戦する選手だった。 計測についても、「私たちが目指すのは『安全で正確な計測』です」と言い切る。今回が大分大会で5回目の検定。「事務局をはじめ関係者がきめ細かく準備してくださるので、国内でも最もスムーズに計測できるコースの一つ」と、大会を支えるスタッフへの感謝も忘れなかった。 取材を終えた後、「関わる」という言葉が頭に残った。 陸上競技に関わる方法は、走ることだけではない。選手を支える人、運営する人、記録を測る人…。それぞれが自分の役割を果たしているから、主役は安心してスタートラインに立てる。 「主役をつくる人たち」は、自分が主役になろうとはしない。だからこそ、その仕事は静かで、そして美しいのだと思う。 (衞藤知愛)
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