寺嶌曜著「深淵のカナリア」
(新潮社・2475円)
2022年の第9回新潮ミステリー大賞受賞作「キツネ狩り」でデビューした豊後大野市出身の作者が放つ第2弾。今回は解決したはずの無差別殺人の真相を追うことをテーマに据え、第1弾に続いてひりつく一作に仕上げた。
警察官の尾崎冴子はバイク事故で右目を失明して以来、その右目が3年前の光景を映すようになった。つまり、犯行が行われた3年後にそこに立てば一部始終を見ることができるのだ。その特殊で信じがたい能力を上司の弓削拓海と署長の深澤航軌だけに打ち明け、それ以来3人で組織された継続捜査支援刑事部別室で、その能力の助けによりさまざまな事件を解決に導いてきた。
しかしその実績に対し、証拠能力の乏しい不正な捜査をしているのではないかとの内部告発が監察にあり、尾崎の能力を公表できない3人は窮地に。そこへ内部告発を見逃すのと引き換えに地下鉄車両内で起きた無差別殺人事件の再捜査を持ちかけられる…。
今作も印象的な冒頭のエピソードから引きつけられ、重厚な文体ながらキレとスピード感もあり、一気に読み進めた。前作に続く殺人事件の再捜査という困難に加え、前作には出てこなかった大きく冷徹な二つの組織との闘いも重要な要素で、それぞれの異なった思惑が絡み合い、激しく残酷な駆け引きを繰り返す。
盛り込みすぎともなりそうなところだが、次に何が起こるのか分からない緊張感と、張り巡らせた伏線が回収されていく驚きと快感にも似た感情が勝り気にならない。
前作に続き証拠にならない特殊能力を捜査の軸としながら、地道な裏付けと考察の積み重ねが一方にあり、エンターテインメントとしても緻密で骨太の警察小説としても成り立たせている。3人のバディ感も、よりこなれてきた。他の登場人物も、読んだ後まで印象に残るくせ者ぞろいだ。
約3年を要しての2作目となったが、次はどんな仕掛けを用意してくれるのか。第3作あるいは第3弾にも注目せずにはいられない。
(高橋桂子・大分合同新聞記者)
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