【Gateインパクト】「あのころに卍固め」スピンオフエッセー 讃岐うどんと長州力

出来上がった讃岐うどん。「麺の形は悪いが、味は最高」=4月25日、香川県高松市
出来上がった讃岐うどん。「麺の形は悪いが、味は最高」=4月25日、香川県高松市
  • 出来上がった讃岐うどん。「麺の形は悪いが、味は最高」=4月25日、香川県高松市
  • うどん道場で、麺棒を使って生地を延ばす参加者の手つき
  • 鏡餅のような形になったうどんの生地
  • 修了証書と麺棒

 香川県高松市を初めて訪ねた。行ったことのない土地は、建物、空気感、聞こえてくる方言や言葉のイントネーションが新鮮で、非日常の世界を感じることができるから楽しい。名物料理を食べるのは必須だ。香川県といえば讃岐うどん。一度聞いたら忘れられない「うどん県」のフレーズは、うどん目当ての多くの観光客を全国から引き寄せる。
 さて、讃岐うどんを食べるだけでは面白くないということで4月25日、四国新聞社(本社・高松市)をはじめ全国の地方紙の仲間たちと、うどんを作って食べる道場「手打免許 さぬき麺業」へと向かった。

■空海から始まったとされる讃岐うどんの歴史

 玄関を入ると、パネルが掲示されていた。「うどん文化」が香川県(讃岐)で受け継がれ、発展していった様子がよく分かる。パネルの記載内容によると、もともとは空海(弘法大師)が、小麦粉をこねた食べ物を唐から持ち帰ったことが始まりと伝えられている。空海は、何と讃岐の出身なのだ。
 「金毘羅祭礼図」というびょうぶ絵が金刀比羅宮(香川県琴平町)に所蔵されている。1702年に描かれたもので、これには「捏(こ)ね」「延ばし」「切り」の3軒のうどんの店が描かれている。このことから、江戸時代前期になって今の形の「うどん」が作られ始めたと考えられている。その後、年中行事や冠婚葬祭の際に家庭などで作って食べる郷土料理として受け継がれてきたという。
 ナルホド。空海が讃岐出身でなければ、うどんの歴史は変わっていたかもしれない。
 そんなことを考えていると、広い室内に案内された。そこには腰の高さほどのテーブル(作業台)が何列も並んでいた。大きなボウル、中力粉が入ったポリ袋、麺を延ばす棒(麺棒)、コーンスターチが入ったおけ、そして包丁が準備されている。そこに、うどん一筋とみられる指導員が登場した。
 まずは生地作りから。ポリ袋から出した中力粉をボウルに入れ、平たくならして指導員のところへ持って行くと、その中に塩水が流し込まれた。麺3人前の量だという。「それでは手をこのような形にしてください」。指導員は手のひらを広げ、物をつかむように指を曲げて見せた。まるでアイアン・クロー(片手で相手の頭部をわしづかみするプロレス技)ではないか。その形でボウルに手を入れ、中力粉と塩水を満遍なく混ぜていく。「団子状にならないように」と指示が飛んできたが、団子がいくつもできてしまった。「でも、混ざっているはずだ」とポジティブに捉えて次の作業へ。

■押す、延ばすを繰り返した麺「形は悪いが味は最高」

 中力粉と塩水を混ぜたものを、ボウルの中で一つの大きな塊にして丸めた。生地が乾燥するのを防ぐため、もともと中力粉を入れていたポリ袋にその塊を入れ、心臓マッサージのような要領で、グイグイと上から手で押して平らにしていった。
 平らとはいっても、まだまだ分厚く、ここからは同じような作業がしばらく続く。未完成の生地をポリ袋から出したり入れたりしながら「巻いて押す」「折り畳んで押す」といった工程を繰り返し、鏡餅のような形を作った。
 続いて「延ばし」といわれる工程に突入。台に打ち粉(コーンスターチ)を振り、そこに鏡餅状の生地を置き、麺棒を転がしながら延ばしていく。全体の厚みを整えるため、生地の方向を何度も変えながらの作業だ。それを続け、最終的には厚さ3ミリほどの、大きな四角っぽい形へと広げた。
 これを3~4段にふわっと折り畳んだ。「幅3ミリ程度に切っていってください」という指示を受け、折り畳んだ生地に包丁を入れた。一緒にうどん打ちをした全国の新聞社の仲間たちは、切った幅がまちまちで笑ってしまうが、素人なので仕方がない。各人の性格が出ている感じがして、極端に太い麺や、極端に細い麺もできた。
 「この道場は連帯責任」ということで、大きな釜で全員の麺を一緒にゆでた。それを器に取り分けて、用意されているだしを注ぎ、ネギとごまを振った。麺の形は良くないものの、しっかりとしたコシがある。何度も、何度もこねて延ばしたかいがあったというものだ。しかも、だしが絶妙だ。お代わりを繰り返し、5、6杯食べた猛者もいた。
 日本語大辞典(講談社)によると、「コシ」は「腰」で、「腰がある」とは「布、紙、麺類などに弾力があり、しっかりしている」という意味。讃岐うどんはコシが重要なのだ。
 プチ修業を終えた証しに、修了証書が交付された。そして、麺棒と、中力粉の分量や塩水の濃度などを記した指南書を頂いた。「家庭でも作ってみたい」とみんなノリで言っていたが、言ったからには自分も含め「有言実行」でなければカッコ悪い。そのうち作ってみたい。

■讃岐うどんとプロレスは「コシの強さ」が共通項

 ところで、高松市は昭和のプロレスファンにとって忘れられない出来事があった重要な場所だ。1984年のこと。高松市民文化センターで長州力とアンドレ・ザ・ジャイアントの一戦があった。
 アンドレ・ザ・ジャイアントは身長223センチ、体重は200キロあり、その巨大さから「人間山脈」「一人民族大移動」「世界8番目の不思議」と恐れられたレスラーだ。
 長州力は身長184センチ、当時の体重は120キロ前後といったところか。圧倒的不利な体格差だが、この試合で、何と、アンドレ・ザ・ジャイアントをボディスラム(抱え投げ)で投げたのだ。
 高松の会場、そして日本中のファンがどよめいた。というのも、アンドレ・ザ・ジャイアントをボディスラムで投げたのは世界で数人しかいなかったからだ。その巨大さについては、これまでの「あのころに卍固め」で何度も取り上げてきた。
 40年以上前のことなので若干あやふやだが、投げた長州力についてアナウンサーの古舘伊知郎さんが「讃岐うどんのようなコシの強さだ!」と評したと記憶している。全国のプロレスファンが「香川県といえばうどん」と完全に認知したのはこの時である、と言ってよいだろう。

 【あのころに卍固め】
JCOMチャンネル大分の情報番組「ひるドキ!!」の金曜日放送のコーナー。大分合同新聞社の公式ユーチーブチャンネル「大分合同新聞oitatvcom」でも同じ内容を配信中。

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