【Gateインパクト】matohuの服作り

トークゲストに菅章・前大分市美術館長(左)を迎え、matohuの服作りについて語り合う堀畑裕之さん(中央)と関口真希子さん=別府市の冨士屋一也百ホール
トークゲストに菅章・前大分市美術館長(左)を迎え、matohuの服作りについて語り合う堀畑裕之さん(中央)と関口真希子さん=別府市の冨士屋一也百ホール
  • トークゲストに菅章・前大分市美術館長(左)を迎え、matohuの服作りについて語り合う堀畑裕之さん(中央)と関口真希子さん=別府市の冨士屋一也百ホール
  • 着物を基にデザインしたmatohuの代表作「長着」が並ぶ展示会場

 服飾ブランド「matohu(まとふ)」。デザイナー堀畑裕之さんと関口真希子さんが2005年、東京に会社を設立し、「日本の美意識」をコンセプトにしたファッションを発信し続けている。
 11月中旬、別府市鉄輪上の冨士屋一也百(はなやもも)ホールで、matohuの服作りのスタイルに密着したドキュメンタリー映画「うつろいの時をまとう」(2023年公開)の鑑賞会と、2人のトークショーがあった。
 matohuについて、映画のレビュー記事を書いて以来、ずっと気になっていた。2人の話を直接聞く機会を逃すまいと足を運んだ。
 鉄輪は以前から何度も訪れているという2人のお気に入りの地。今年、築120年を超える冨士屋ホテルのスタッフのウエアをデザインした縁もある。
 堀畑さんは哲学、関口さんは法律を大学で専攻した。その後、2人は文化服装学院(東京)に入学して出会った。
 会社を設立して以来、今まで変わらず大事にしているのが「日本の美意識」。ブランドを立ち上げる前に外側から客観的に自分たちを見つめてみようと、英国に1年間滞在。自国のアイデンティティーを踏まえて物作りをすることの重要性に気づいたという。映画は単にデザイナーを追ったドキュメンタリーではなく、コンセプトをどのように服として表現していくかを追体験できる流れになっている。
 matohuの服作りに欠かせないのが、「言葉」の力。2人は古来、日本人が心を寄せてきた季節の移ろい、身の回りの物や風景に目を向け、そこから得たインスピレーションを言葉で表し、そのキーワードを手がかりに制作を進める。
 例えば、継ぎはぎだらけの昔の藍染めの着物には、より丈夫に、より温かく、と何重にも継ぎを重ねた生活のための手仕事に無作為の美を見いだす。それを道路の隅に吹き寄せられた落ち葉に見立て「ふきよせ」とのコレクション名を付け、過去に出た端切れを組み合わせた服を作って発表した。他にも、暗闇の中のろうそくの明かりは「ほのか」、浜辺に打ち寄せた波の跡は「なごり」。
 まず両者で徹底的に対話を重ね、納得してから制作に入る。言葉にすることで、2人だけではなくスタッフらともイメージの共有ができる。とにかく話し合い、時には意見を戦わせながら、言葉に導かれていく服作りの過程が映画では描かれている。
 matohuの服作りは、映画に登場する文化・ファッションテキスタイル研究所長の宮本英治さんの言葉「伝統とは、革新の連続の結果である」を体現している。宮本さんは日本のテキスタイル(織物)界の第一人者として知られ、独自の技術でクリエーティブな布地を数多く手がけてきた。matohuも最初のコレクションから宮本さんが作った生地を使っている。
 matohuの2人は映画で密着された「日本の眼」シリーズを2018年に終え、「手のひらの旅」をスタート。従来のショーを卒業し、日本各地の伝統工芸職人を訪ね、新しい作品を生み出すことに挑んだ。宮本さんの言葉は「革新を継続する心は伝統より重い」と続く。
 matohuが表現する日本の美意識とは「決して特別なものではなく日常の中にあるけれど、改めて気づくことで自分の生活が豊かに変わっていくようなもの」だと堀畑さんは言う。
 次々に消費されていくファッションではなく、ぶれない哲学を持った物作りを続けるデザイナーの生の声を聞き、ぴしっと背筋が伸びる思いがした。

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