第2部 トーク セッション

地域、職人、商品の物語

 キーノートセッションと地域リポートに続き、トークセッションが開かれた。出演者からは、作り手として自信があることや大切にしている点を説明。製品の販路拡大やPRの手法、異分野の職人による連携にも話が及んだ。一般聴講者からの質問や、現場を取材する記者の発言もあり、会場が一体となって大分のものづくりの将来像を描く議論が交わされた。

時代とともに変化

 佐々木 お聞きしていて、率直に大分でこんなものづくりがされていることに感動しました。独自のものづくり。「五者五様」に、いろんなインスパイアを受けながらこの話が広がっていけばいいなと思っています。最初に金谷さん、印象をお願いします。

 金谷 皆さん、ちゃんと製造して販売してすごいなと。もうアドバイスが要らないくらいです。ご当地の素材を生かしたものづくりだったり、もともとのビジネスから転換されたり、頑張ってらっしゃるなと思いました。この先、10年、20年と続けてどうなるか。非常に大変です。時代とともにものづくりの環境も変わってきています。ぜひ続けていただきたいです。われわれも18年目なので頑張ります。

 佐々木 続ける、というのが難しいんですよね。

 金谷 僕らが起業した1999年から2000年はちょうどデザインプロダクトブームが起こっていました。ただ、5年くらいで消えていく会社が多かったです。在庫とかノウハウとか、持続していくためのコントロールが難しいんですね。皆さんも実体験されているところではないでしょうか。

価格は落とさずに

 佐々木 皆さんに質問です。「ものの作り手として、ここは負けない」「一番大事にしている」ところをスケッチブックに書いてください。ちなみに、金谷さんはどうですか。

 金谷 昔は「誰の挑戦でも受ける」でしたが…悩ましいですね。依頼が増えて、中にはすさまじいお願いもあるので、「どうにか何とか考える」がこれまで変わらない姿勢です。

 佐々木 皆さんから一言ずつ説明をお願いします。

 豊住 「手を動かす」。頭の中で考えてばかりで形を作っていない人は、ものづくりをしているとは言わないと思いますので、自戒を込めてこの言葉にしました。自分もまず手を動かすようにしています。

 小野 「人も含めてジェイ・パックにしか作れない技術持ってます」にしました。

 佐藤美樹子(以下 佐藤美) 「しなやかさ」。竹は割っていくと薄くなり、しなやかさが出てくるのでそれを大事にして、作品を作っています。

 仙崎 「らしさ」。あいまいなようですが、いろんなことにかかわってきます。例えば、日田杉は軟らかいがゆえに粗悪品といわれることもあります。しかし、その軟らかさが光を透かし、色を染めやすいといった特性につながります。地域性や自分らしさを出すことによって価格競争に陥らないようにしたいと思っています。

 佐々木 日田ソファの“らしさ”とは。

 仙崎 日田杉の歴史もありますが、一番は「日田の人らしさ」が出ているところです。気取っていないとか、何かほっとするような部分かな。課題としては、地域のブランドとして成り立っていないので、全国的にPRして土台をつくることが必要だと思っています。

 佐藤晃央(以下 佐藤晃) 「お客様の笑顔」。商売感が丸出しなんですが(笑)。僕たちは対個人なので、お客さんの笑顔を見ることができます。そこがないとものづくりを追求できないと思い、これにしました。

 佐々木 京都や尾道など、他にも帆布製品を作っている地域はありますが、大分にこだわってされています。「大分帆布」で意識して打ちだしているところはありますか。

 佐藤晃 職人が少なくなっていく中で、いかに職業をかっこよく見せるか、ですかね。ホームページやフェイスブックでも職人を出すように発信しています。職人はかっこいいです。

 佐々木 価格設定でも勝負していると思います。

 佐藤晃 帆布製品は数限りなくありますが、うちの価格は高い部類に入ると思います。安い方がいいというお客さまは買わないでしょう。ただ、1から10まで職人が作りますし、そのストーリー性を見てもらいたい。職人の給料にもつながるので、自信を持って、値を落とさずにやってきたいと思っています。

どう見せるか重要

 佐々木 デフレスパイラルで消費者は安い製品に慣れています。

 金谷 価格設定が一番難しいですね。ものだけでない伝え方、設計が大事になっている。どう見せるかでも、ものの価値は変わってきます。例えばブライダルリングを量販店じゃ買わないですよね。売る場所も大事です。商品設計だけでなく、今は販路や見せ方といった「状況」をつくるにも設計が必要です。これまで頑張ってきた百貨店が弱っているので、作り手が頑張っていかなくてはならないのが現状です。

 佐々木 今回の出演者には偶然にもデパートで販売をした経験がある方が多いです。

 金谷 伝え手側にいたというアドバンテージは大きいと思います。

 佐々木 豊住さんもデパートにいたことがあるんですよね。

 豊住 はい。販売をしていた時は、お客さんが何を求めているのか、手元に何があるかを組み合わせて考えていましたが、人の気持ちを引き出していくことが今の仕事につながっているのかなという気はします。ファブラボには漠然と「3Dプリンターで作ってみたい」と個人で来る人が多く、まず話をしないとものづくりが始まらないんですね。しょうもないようなものも作ってみて、作るのは難しいことじゃない、ということを伝えたいです。

伝統工芸の担い手

 佐々木 きょうは伝統工芸の作り手の方にも来てもらっています。別府竹細工をされている佐藤さん、伝統工芸の担い手として、技術を受け継ぎ、発展させていくという意識はありますか。

 佐藤美 別府には竹工芸の学校があるので、伝統工芸の中では恵まれた環境にあると思います。行政が運営しているので、必然的に職人は生まれるわけですが、職人志望か作家志望なのかで進路が違ってきます。

 佐々木 かつて別府で売られている竹細工は中国産のものが多いイメージでした。今、見事に本来の姿を取り戻しているような気がします。

 佐藤美 デザイン性が高くなり、作品の質が上がりました。いい流れにはなっているかなと思います。別府竹細工は新しい編み方は生まれないので、今までにある技術をいかに現代に生かすかが問われます。

 佐々木 実は竹細工の世界で身内が7、8年頑張っていたんですが、売り出し方とかが分からなくて成り立たず、辞めてしまいました。

 佐藤美 竹細工の学校は以前1年制だったのですが、そのころかもしれないですね。今は2年制になっていて、基本的な技術だけでなくて自分が作りたいものを作れるように技術指導をしています。

 

縦割りのイメージ

大分合同新聞社日田支社 記者 井上有紀子
 佐々木 日田支社からも記者が来ているので、話を聞きたいと思います。

 井上 4月に日田に赴任しました。ソファの生産が盛んなことは赴任の時に初めて聞きました。ストーリー性もあって面白いなと思います。その地域に行くからこそ買えるものは魅力があります。

 佐々木 日田杉だけでなく、私は仙崎さんがあらゆるものをプロデュースしていることに驚きました。縦割りのイメージが強い職人の世界は横のつながりがあまりないようですが、苦労されていることはありますか。

 仙崎 たくさんあります。どうしても人間なので合う、合わないはありますし。でも、いい仕事ができないと日田のものづくりをちゃんと伝えられません。素材への敬意を払ってものづくりに実直に向き合っている人が商品を作り、買ってくれた人がどれだけ幸せになるかというベクトルをつくり出すことが大事だと思っています。共に切磋琢磨できる職人と組めたときが一番いいものができます。自分も人間的に成長できるようなものづくりを一緒にしたいです。

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