家具は店舗の前で制作する。椅子の出来栄えを確かめる高野知則さん=豊後大野市犬飼町黒松
豊後大野市犬飼町黒松。築100年になろうかという旧郵便局舎を改装した雑貨店「はなれ小舎」が静かな人気を呼んでいる。店主は家具作家の高野知則さん(41)。店内には物珍しい雑貨やクラフト作家仲間の作品を置く。自分の家具は控えめに奥の方にあった。
「夜警や餅つき、出初め式など、年末年始は消防団の活動が忙しい。やっと落ち着きました」と高野さん。過疎が進む地域の貴重な担い手でもある。
大分市下郡の出身だが、父親のUターンに伴って豊後大野に移り住んだ。高野さんにとっては通い慣れた祖母の家。地域にはすんなり溶け込めた。
木工の技術は独学だ。縁あって大分市で雑貨店の仕事に巡り合い、得意の木工も始めた。地元で工房を探していたら、旧郵便局舎に出合った。「売り上げは低空飛行ですけど幸せです」
注文が入れば家具を制作するし、中古品を修理してリメークもする。店頭のほか、軽のバンに積み込んでものづくり市にも向かう。
「お客さんとの接点です。売るというよりも店や私を知ってもらうことが大切なんです」
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年が明けた週末、大分市のセントポルタ中央町で「ものづくり展新春!ギフトエキスポ」が開かれた。アクセサリーや手芸、皮革などの作家が出展している。
大分市田尻のアクセサリー作家、岡田智己さん(37)は子育ても落ち着き、ハンドメードを楽しむようになった。インターネット通販や委託販売、イベントに出展しているという。
手作り市について「みんな作風が違い、刺激になります。創作意欲が湧きます」と話す。最近はペンダントに琉球ガラスを使ってみたら、年配のお客さんが増えた。アジサイなどの花びらをコーティングしたイヤリングも好評だった。
アクセサリーを並べる箱庭や、看板を制作した夫の昌史さん(46)は「高校時代にデザインを学んだので、得意です」と夫婦で手作り市を楽しんでいる。
主催者で、皮革クラフト作家の橋本謙二さん(52)は脱サラして5年前に独立。現在は九州から名古屋まで年間130のものづくりイベントに出展する。
「大分の課題は屋根のある開催場所がないこと」と指摘。営利目的では使えない、アート展示に限るなどの制約が多いという。「日本中にクラフト作家がいる。1泊2日で出展できる場所があれば、大分のものづくり市が盛り上がりますよ」と話した。 =終わり=
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次回は、県内外で地域に変化をもたらすものづくりの現場を「ミライリポート」として連載します。