リアルな付き合い

大分合同新聞文化科学部 佐藤栄宏記者
 佐々木 移住は行政のいろんな支援があり、競い合っているようなところもあります。ここで、日田市、竹田市で移住者の取材もしてきた佐藤記者から一言。

 佐藤 日田支社と竹田支局にそれぞれ2年、以前は津久見支局にも7年いました。移住の取材はよくしていますが、皆さんの話を聞いて各地のスターだなと感じました。自分の力で切り開いてやっている。そういう人たちが集まっているんだなと思いました。

 佐々木 皆さんがしていることを目標にいろんな人がやってきて、人が人を呼ぶサイクルができていますね。皆さん同士で質問はありますか。

 子安 後藤さんに。空き家対策、空き店舗調査をしていて、大家さん、地権者たちと話をしますが、片付けが大変だからとか、荷物、仏壇があるといった理由でなかなか貸してもらえません。一緒に片付けができればいいのですが、なかなか人に手伝ってと言えません。手伝ってもらえるこつは。

 後藤 SNSで発信して甘えることです(笑)。依頼が来た人の周りを固め、自分たちも参加します。「この人のためなら行こうか」という友達がいたりするので。

 柳 SNSで発信すればつながれるというわけではありません。手段はSNSでも、集まったのはリアルな人脈がある人たち。不特定多数ではない。ネットワークのある人、発信力のある人だから効果的で、リアルな付き合いがあってのツールだということですね。

小学校の存続問題

大分合同新聞宇佐支局 宮崎明人記者
 柳 栗原さんにお聞きします。小学校の存続問題があるとのことですが、田染小学校の現状は。

 栗原 今年は3人の1年生が入学しました。来年も2、3人います。危機を脱するために、小学校近くの空き家を洗い出して、市の移住政策とセットにして子育て世代の利用を呼び掛けています。需要と供給は今、ぎりぎりバランスが取れているところです。7月の3連休には、大都市圏の家族に呼び掛け、グリーンツーリズムの民泊を体験し、小学校も見てもらうツアーを開催します。応募は定員に達しています。

 柳 子育て世代に来てもらうには何が重要でしょうか。

 栗原 まず学校を知ってもらうことです。小中学校は近くにありますが、高校はどうしても離れています。そういったことも含めて、まず子どもの学校。仕事に関しては、地区外では働けるのですが、地域の中で働き田舎らしい生き方ができる仕事というのがもっとあるといいと思います。

 佐々木 少し前までは学校を残そうと地域が頑張っていましたが、今はむしろ閉校の流れがあります。宇佐の場合、廃校ではなく休校にし、学校が残っている割合が高いと聞きます。宮崎記者、どうですか。

 宮崎 取材によると、市としては極力統廃合をしない方針です。地域と密着した学校を目指すからだということです。市内には小学校が27校あり、うち2校が休校しています。過去に休校し再開した所もあります。院内中部小学校上院内分校は2007年に休校し、10年度に再開しました。

 佐々木 折り合いは難しいですが、移住の中で学校は大きな選択の要素です。子どもを大事にする行政の施策はたくさんあります。移住者向けの施策は実は住民向けの施策でもある。そのあたりは大事にしていかなければ。

自分の地域が一番

 柳 定住してほしいというのもありますが、同時に風通しがいい、人の動きがある所に人が来るということもあります。最初から定住を意識し過ぎると入ってきにくい面もあるのでは。

 子安 開いていると出ていくこともありますが、囲いすぎない方が自由度があって、人は入って来やすいと思います。まちの色が好きで入って来るのか、まちの人が好きで入って来るのか、地域が力を注ぎ、まちの個性を出していくといいと思います。

 柳 実際、移住している人は、人との出会いがあったから。そのまちのことがすごく好きな人との出会いです。「こんないい所はない」という自信、地元愛がある人の所へ行きます。何か施策があるからという訳ではありません。施策は大事ですが、そこに血が通っていなければ人は動きません。お金で人生を左右される決断はしないのでは。

 小金丸 いくら良い資源があり人がいても、自分たちでその良さを認識していないと伝えることもできません。住んでいる人が「自分の地域が一番」というところがないと。各地域、みんな一番でいいのだから、言い切れるかどうか自信の問題だと思います。

 柳 どうやって自信は育まれると思いますか。

 小金丸 私はきっかけづくりができる立場で地域にいます。昨年から「種まく暮らし」というプログラムを始めました。月に1回ワークショップを開催して暮らしに基づいた当たり前のことを体験してもらっています。次回は海女さんたちのところてん作りです。自分たちにとっては当たり前でも、他の人の目にはかっこいいことに映る。外から人を呼んできて交流することで「自分たちのしていることはすごいのでは」と認識できます。「私の子でもそういうことしていないよ」ということもよくあります。「本当にじいちゃん、ばあちゃんは宝物」「今のうちに学んでいなければ文化も何もなくなってしまう」という声が地域の人から聞こえます。何を残すのか、どう残していきたいのか、残さなくていいのかという考えを、各地域が持たないと特色がなくなっていってしまいます。

自分たちの魅力は

 佐々木 今なら間に合う。地域づくりをしっかりやるべきです。戸倉さんがしていることも、地域の人にとっては当たり前の料理でも、写真に撮ることでおいしそうに見える。下郷の人たちも冊子になるのを喜んでいるのでは。その作業はそれぞれの地域に必要だと思います。

 柳 移住者、特に若い人は昔ながらの暮らしや手作り、大都市ではできないことをやりたがります。味が違うね、こんな食べ方もあるんだと言われて宝になる。地域の良さを再発見させてくれるのは、移住者が来ることの魅力の一つでもあります。自分たちの魅力を再発見することは、人を呼ぶと同時に地元愛を育むことにもつながります。

体験ツアーを開催

大分合同新聞竹田支局 原田宏一記者
 佐々木 いろんな移住促進のための施策をつくっている県の加藤さんも来ています。

 加藤 少しでも多くの人に移り住んでもらいたいという思いはもちろんですが、地域の活性化になると期待して移住を促進しています。掘り起し、情報発信、促進、定住支援に取り組んでいます。住民が地域をしっかり愛して地域づくりに頑張っている所は、県内にたくさんありますが、知ってもらわなければ選択につながらない。東京、大阪、福岡で毎月相談会をしています。移住体験ツアーを開催し、実際にいろんな所を見てもらっています。空き家を改修し利用してもらったり、すでに移住した人の支援として交流会を催したりしています。

 佐々木 移住してきたばかりの記者もいます。

 原田 山口県出身で2月に入社しました。1カ月後に竹田に行ってくれと言われ、地図を開いて「どこ?」というところからのスタートでした。とてもいい所だと支局経験者が口をそろえて言っていましたが、まさにそう。人が良い、水が良い、空気が良い。土ばかりの、こんなのびのびした環境で子育てができるのも幸せです。地元の人は「何もない」と言いますが、自然は一番の財産です。その中に埋もれている、観光資源になるものはたくさんあります。外からの視点でしっかり掘り起こしていきます。



>トークセッション3へ続く

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