コーディネーター 佐々木 稔 大分合同新聞社編集局次長
佐々木 「田舎暮らしの本」は1987年に創刊したと聞いています。
柳 今年で創刊30年、うちの会社の中でも一番長く続いている雑誌です。それは、自分で食べ物を育てるとか、地域の祭りに参加するとか、手応えのある暮らし、地に足のついた暮らしに対する憧れが、時代を超えた普遍的なものだからでしょう。ただ僕が入った20年ほど前は取材先を不動産業者さんに紹介してもらうことが多く、若い移住者は少なかったです。「定年後の悠々自適な田舎ぐらし」が主流でした。
佐々木 流れが変わったということでしょうか。
柳 さかのぼると、団塊の世代の退職に合わせて移住相談窓口の設置が広がりました。2007年には一般社団法人移住・交流推進機構(JOIN)が設立。しかし、雇用延長もあり、「思ったほど戻ってこない」というのが自治体の実感だったかと。08年にリーマンショックが起こり、若い人の就職が難しくなります。地域おこし協力隊の制度が始まり、現在は全国4000人弱、900弱の自治体で活動しているといわれています。東日本大震災の後、疎開移住という言葉が生まれ、若い人が田舎に行く流れが目立つようになりました。今では若い移住者の姿を過疎地で見ることは珍しくありません。
佐々木 移住者の多くが30代、40代と聞いています。
柳 確かに比率が変わっています。ふるさと回帰センターの調査で、かつて7割がシニアだった時代から、今は7割が20~40代。もちろん人数も増えています
佐々木 意識の変化でしょうか。
柳 われわれの若いころとは、ずいぶん違いますね。例えば車とか。所有に関してこだわらないし、シェアとかソーシャルでつながることへの意識が高い。若いんだけど成熟している。ある意味、まともともいえます。現在の日本経済で、地方の方に明るい未来を見る若い人が田舎に来ているのでしょう。