第2部 トーク セッション

地元愛、居場所、そして人 「豊かさ」とは新たな価値観

 キーノートセッションと地域リポートに続き、トークセッションが開かれた。参加者が語ったのは〝おおいた暮らし〟を選んだ理由や移住後の取り組み、これからの夢について。移住のきっかけとなった「人」の存在、移住者が地域に加わることで見いだされる価値や地域の魅力、豊かさとは何か―ということにも話は及んだ。熱い議論から、「地域の人が好き、まちの色が好き、豊かな暮らし」という宣言が導き出された。

田舎の良さ再認識

 佐々木 未来デザイン会議「ハピカム」を2011年から18市町村で開催してきました。今回は未来デザイン宣言「ハピカム」としてテーマを設定し、6地域から集まっていただきました。皆さんの取り組みは多岐にわたっていて、「これとこれが合わさったら面白いことができるのでは」と思うものもいろいろあります。他地域へのメッセージにもなる。柳編集長、6人の話を聞いた感想を。

 柳 ユニークで、こんなスケールの大きなことができるのかという感想を皆さんも持ったのでは。東京で同じことができるかというと、なかなか難しいかもしれません。活躍の場所や役目をつくってくれる優しさは、田舎ならではの温かさです。役割をつくることで人が育つということもある。そういう場として田舎は良いと再認識しました。

 佐々木 「心が動かなければ住民票は動かない」「やっぱり人」という話もありました。まず、皆さんの移住のきっかけとなったことをスケッチブックに書いてください。何によって心を動かされましたか。

フィーリング合う

 後藤 「地元愛」です。Uターンなので。一度地元を離れて、自分の居場所は都会じゃない、地元にあるという思いが強くなり、戻ってきたいと考えました。20代のころはUターンする友達は多くありませんでしたが、30代になって仕事で自信を付けたのか、「帰ってもできるな」と戻ってきている人が多いです。空き家の活用で事業をつくることを目標に、まずは場所を提供する活動をしています。実際友人が1人、そこを貸してほしいと戻ってくることになりました。

 柳 気持ちの面で、地元を出る前に「戻りたい」と思う気持ちを刷り込んでおくことも大事だと思います。地元の人と仲良くする、触れ合う、祭りに参加する、何かをして褒められるといった経験があると、自分の「居場所感」の醸成になる。戻りたい意識にもなると思います。それで確実に戻るとは言えないが、欠かせません。
 後藤 確かに、自分の居場所感があったから、戻ってきたいと考えたんだと思います。こうしたまちづくりを地道に下の世代の子たちにも伝え、いい方向に向かえばいいと思っています。

 栗原 「アントン・マリオさん」。国東半島に移住し、ガイドとして働いている人です。下見に来て、いろんな移住者に話を聞いてみようと、地元の活動に参加した時に知り合いました。アントンさんは「来ればいいじゃん」と、優しくやわらかい雰囲気で。フィーリングの合う人がいたというのが、ちょっとしたきっかけになりました。

ツーリズム実践者

 小金丸 私は「九州のツーリズム実践者」です。グリーンツーリズムを地元で実践している人たちの影響がすごく大きかったです。大学を卒業し、一度福岡に戻りましたが、あまり生活が楽しくなかった。いまいち目的を見いだせませんでした。思い出したのが安心院で出会ったツーリズムの人たち。楽しそうに生きている姿が頭に浮かんで、やっぱり福岡ではなく、地域と呼ばれるところに戻ってその人たちと生きていきたいと思いました。ツーリズムを実践しているおばちゃんたちみたいになれたらいいなと思っています。

 佐々木 ツーリズムの活動と移住は親和性が高い部分もあるでしょうね。

 小金丸 ツーリズムをしている人たちは日ごろから外の世界と接することが多いです。臼杵では世界各国の人たちと触れ合っているし、「異分子」を受け入れやすい人柄の人が多いのでしょうね。その人たちが受け皿になるのは、移住にもいいこと。知ってもらわないことには移住につながらないので、その土地に行くきっかけとしても大きいと思います。県内13地域で取り組んでいて、やり方次第では、他でも十分できると思います。臼杵でも、移住してきた人がパン屋や農業などをしながら民泊家庭になっているし、可能性としてはいくらでも広がっていくと思います。

地方がかっこいい

 子安 「“便利”よりも大切な事がある」。都会で知り得なかった大切なものが地方にはあります。東京にいると、電車が時間調整で1分止まっただけでイライラします。急いでいるわけでもないのに。同じ人間なのに環境によって心が狭くなっている。便利を追求するのが都会で、でもそれに慣れ過ぎて良くなくなっていく。心の豊かさを求めて、地方に行こうと思いました。

 柳 東京からたくさん友達が来ているそうですが、住みたいという話にはなりませんか。

 子安 行政の施策として移住促進の取り組みが始まりましたが、今竹田は次のステップとして、人が人を呼ぶようになっています。遊びに来た妻の親友が気に入って移住してきたり、仕事を辞めて移住してきた人もいます。

 柳 クリエイターが地域に行くケースもあります。「先っぽ感」は今、むしろ地域にあるという感覚はありますか。

 子安 そう思います。地方はかっこいいとどう思わせるか。地元を遅れていると思っている人が多いですが、「こっちの方がかっこいい」とどう思わせるか。都会の無機質な中にしかないおしゃれと、田舎の中ではまるおしゃれの両方がある。自然の中にあったり、地元の人たちが関わっていて、人と人とのつながりがある田舎のものって、実はすごくかっこいい。

「変わった人たち」

 戸倉 私は「中島信男、横山民幸」。下郷に住みたいと思ったのには、地域のおじさん2人の存在がありました。行政の人以上に世話を焼いてくれ、懐が深くて「やってみたら」という感じのところがある。移住者の生活を面白がってくれます。

 柳 連れ回していろんな人に引き合わせてくれたとのことですが、どんなタイミングだったんですか。

 戸倉 最初大分に住むつもりはなくて。九州の移住先を探していましたが、夫も私もカメラの仕事をしているので、「半農半カメラ」を考えると、福岡の方が仕事をしやすいのではと思っていました。たまたま大分に来て、立ち寄った耶馬渓のコーヒー店で「東京から来た、農業がしたい」と話し紹介してもらったのが、下郷農協の横山さんでした。後日、横山さんと待ち合わせをして、1日地域を車で回ってくれました。

 榑松 「安心院のお父さんお母さん」です。13年前に、東京の世田谷区を50CCのミニバイクで出発しました。テントや寝袋を載せて、1週間くらいかかりました。ちょっと変わり者だと思います。安心院に着いて、居候させてもらったのが「お父さんとお母さん」のところです。訳のわからない若者を受け入れ、住まわせ、3食作ってくれました。私はここに義理がある。それがきっかけで今、ここにいると思っています。

 佐々木 よく居候させてくれましたね。

 榑松 変わった人たちです(笑)。

 柳 家が見つからなかったと。

 榑松 いろいろ事情があって、仏壇があるからとか。なかなか空き家がありませんでした。

 戸倉 私はその点、タイミング的にラッキーでした。私たちが移住した翌年は空き家がゼロになってしまったので。



>トークセッション2へ続く

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