ビデオカセットが並ぶかつてのレンタルビデオ店の店頭
放送中のテレビドラマ『ラムネモンキー』が面白い。現在と1988年が交錯するミステリー含みのコメディー。好みが分かれる物語だと思うが、80年代後半に中高生時代を過ごした世代(特に男子)には刺さるところだらけだ。
1988年に中学2年生だった男子3人組が当時の“失踪事件”をきっかけに再会。悩み、挫折を抱える五十路(いそじ)の男たちが、古里で記憶をたどりながら真相を探る―というお話。主演俳優3氏の脂ののった演技が楽しいだけではない。レンタルビデオ(VHS、ベータの)、カンフー映画、マイケル・ジャクソン来日公演、オタクのはしりと、当時の空気感に満ちていて、同年代を過ごした者にはたまらない。
キーワードの一つが「中2病」。さまざまな解釈があるが、「思春期に特有の自己愛に満ちた空想や言動」「自意識過剰で、面倒くさい状態」といったところだろうか。
筆者(1972年生まれ)が中2だったのはドラマより3年前の1985年。ちょうど昭和60年。プロ野球・阪神タイガースの日本シリーズ制覇と、最先端の科学技術を披露する「つくば万博」が、日本中を席巻していた。万博には、ありがたいことに父親が連れて行ってくれて、人気パビリオンが誇示する未来の世界に衝撃を受けた(コスモ星丸、懐かしい)。
通っていた県南の某中学校は、なかなかに荒れていた。大人になって、出先で出身校の話をすると「あそこは相当悪かったらしいですね」と言われたことが何度かある。当時、評判は市外まで伝わっていたらしい。校内のどこかで「パリーン!」とガラスが割れる音を聞くことがよくあった。落ち着かない毎日だったが、少し刺激的でもあった。
洋楽にのめり込んでいた自分は、学年の人気者だった友人が結成した、今風に言えばエアバンドに引き込まれた。その名も「パープルゴッド」。休み時間に机を並べたステージに立ち上がってほうきをかき鳴らし、がなり立てるという奇行に及んでいた。まさに中2病。恥ずかしい。
回想が長くなってしまった。このドラマを見ていると、ついついあの頃の自分はと思い出す。そして、中2病の心理状態、妄想、行動がストーリーの重要な要素になっているのが面白いところだ。
もう一つ挙げたいキーワードは「記憶の改変」。幼少時など昔のことは忘れている、もしくはまだらに覚えている。それどころか、覚えている内容が事実と異なっていたことに気付いたという経験はないだろうか。故意、悪意ではなく、なぜだか分からないけど間違って記憶していたと後になって気づくのだ。
第4話。ドラマの主人公の一人、キンポーは、イラストの腕前が抜群で漫画家志望だった。だが、父亡き後家計を支える母親に反対されて諦めた。ところが、事件を探る中で、それが勘違いだったと気付く。実は、漫画家を目指す覚悟がない一方で、尊敬する母親が懸命に切り盛りする理髪店を継ぎたいと自分で決意していた。どうやら年老いた母親の介護で心身疲弊する中、「母親のせいで諦めた」「なのに今、苦労させられている」と記憶を塗り替えていたのだ(と解釈した)。ここに前段の中2病も関わっている。
ドラマは終盤。そもそも「マチルダ」は失踪したのか…。主人公3人が過去を探る冒険を通して、人生の輝きをどう取り戻していくか…。目が離せないのだ。(本)
▽『ラムネモンキー』は、テレビ大分では水曜深夜に放送。