佐賀関の人々に元気を届けたレスラー、アイドル、スタッフら=大分市佐賀関
快晴の2月21日、物まねレスラーのアントニオ小猪木が、大分市佐賀関の大規模火災復興支援イベント「佐賀関AID(エイド)」にやってきた。プロレスとアイドルショーの無料複合イベントで、佐賀関市民センター前広場に集まった人々に笑顔の花が咲いた。「1、2、佐賀関 ダーッ!」。小猪木にとって忘れられない一日となった。
■被災現場で確信した「遠慮が一番の失礼」
「火災が起きた現場に行きたい」。イベント開始前、小猪木は、この日タッグを組む佐賀関出身の覆面レスラー・鯖王(サバキング)らとともに被災エリアに向かった。昨年11月18日に起きた佐賀関の大火は何度も、何度も、ニュースで見た。そのたびに心を痛めていた。
近くで車を止め、立ち入り禁止の規制線ギリギリの場所まで歩いて近づいた。焼け落ちた家屋や町の一部が見える。焼損面積6・4ヘクタール。焼けた建物は194棟。見たのはほんの一部分で、これがずっと奥に向かって広がっているのだと思うと言葉が出ない。その光景を決して忘れぬようにと、しばらくその場にたたずんだ。
やや沈んだ気持ちで同じ道を引き返していると、「小猪木さん!」と女性が声をかけてきた。「ハイッ」と即座に元気モードに切り替わる小猪木。さすがだ。
女性は住民の鈴木美奈子さん(51)。このあとイベントに行こうとしていたら、小猪木と鯖王を見かけたので、うれしくて声をかけたのだという。「ものすごく運がいい」。鈴木さんはそう言いながら、リュックサックから色紙を取り出した。小猪木、鯖王がサインを書いている間、すさまじい大火だったことを説明した。
前向きで明るい鈴木さんから逆に元気をもらった形となった小猪木は「遠慮が一番の失礼である」ということを、あらためて確信した。本家・アントニオ猪木さんの教えなのだという。「きょうはこの気持ちで行きます」。火災現場を訪ねたことで、小猪木に闘魂が注入されたと言って良いだろう。
■ドタバタ前座試合、熱々おでん攻撃の反則
イベント会場は、その火災現場から車で5分ほどの佐賀関市民センター前広場。主催のプロレスリングFTOがリングを組み、椅子を並べている。屋台も多数やってきた。開始時間は午後1時。だがその40分ほど前、会場を見渡すと空席が目立っていた。雲一つない空にはトビがピーヒョロロと舞っている。いつもの興行パターンなら、多くの人たちがすでに会場入りし、売店でグッズを買い求めているような時間帯だ。FTO代表のスカルリーパー・エイジは「お客さんは来るだろうか」とつぶやいた。察するに「大火でみんながふさぎ込んでいるのではないだろうか」という心配がエイジの中にあったのかもしれない。
イベントはプロレス体験教室とプロレス3試合、それに大分のアイドルユニットChimo(チャイモ)のライブで構成。午後1時、プロレス体験教室で始まり、続いて第一試合のゴングが鳴った。岡崎恭也、翔(しょう)VSスーパー・カボストロング魔神、TOSSHI(トッシー)のタッグマッチだ。試合中、リングから立ち去ったカボストロング魔神が、屋台でおでんを買って戻ってきた。そして熱々のタマゴやこんにゃくを岡崎と翔の口に無理矢理押し込む反則の暴挙に出た。この試合のハイライトシーンだ。前座にふさわしいドタバタ劇が繰り広げられた。
■アイドルの歌やダンスに誘われ住民続々
続いてリング奥のステージでChimoのスペシャルライブが始まり、カラフルな衣装の5人「なち」「あたる」「あおい」「あむ」「はなか」が登場。
Chimoは「Challenge(チャレンジ)」「Change(チェンジ)」「Chance(チャンス)」から取った「Ch」と、そして「in my oita(イン マイ オオイタ)」の「i」「m」「o」を合体させたのが名の由来。大分県や地域の活性化のために活動し、社会貢献をする。そして見てくれた人たちを笑顔にすることをコンセプトにしており、まさに佐賀関AIDの趣旨に合致しているというものだ。
5人は元気いっぱいに「音速生徒手帳」「スター☆オブ☆ワンダー」など4曲を歌い、ダンスを交えたパフォーマンスを展開。広場に楽しい音楽が鳴り響いた。
小猪木らは、前座試合とライブを見ていた。気が付けば椅子席は埋まり、立ち見の人たちもいるではないか。イベントは「音」が命。リングでレスラーが受け身を取る際の「ドカーン」という音や、ライブの音に誘われて、住民らが続々とやってきたのだ。最終的には延べ300人超が集まった。「お客さんは来るだろうか」というエイジの心配は杞憂(きゆう)に終わった。
そんな中でイベントは後半に突入する。さあ、いよいよアントニオ小猪木の出番だ。(次週に続く)