別府八湯をはじめ、数多くの温泉地を抱える「温泉天国・おおいた」。人にあまり知られていない秘湯、古くからの名湯、最近売り出してきた人気スポットなど「ちょっと気になる」温泉を、温泉好きの記者が訪ね歩き、入湯客などと触れ合いながら現地からの入湯体験をリポートします。温泉好きのあなたには見逃せない企画です。
※大分合同新聞 夕刊1面 2002年4月17日~2008年3月27日掲載
温泉の三つの入浴アイテム。それはタオルと笑顔と好奇心?。湯船に体を沈めれば会話のキャッチボールも、必要最小限の言葉で事足りる。裸同士の付き合いはいいもんだ。 「どちらから?」 「岡山は倉敷です」 「気持ちいいですね」 「最...
天瀬町といえば玖珠川沿いの温泉旅館街が有名だ。その温泉旅館街を横目に、国道からそれて南に向け車で走ること約7㎞。山あいの細い道を抜けると視界が開け田園風景が広がった。 「ん?」。 視界の中にタオルと洗面器を持った人の列。向かう方向...
「もー最高っ!」。静岡県からやって来たアルバイト仲間の20代女性4人が声をそろえ、大きく伸びをして砂床から起き上がった。「こんなの初めて。帰ったらみんなに宣伝しまーす」。上気した顔が一斉にほころんだ。 別府で唯一、自然の海岸線が残る上...
部屋のカーテンを開けて、「よしっ」と心に決めた。まぶしいほどの朝日だ。早起きしたからには、何かいいことをしなければ。 連日連夜で続いた酒の席。「ここはひとつ温泉へ、酒浸りの体を清めに行こう」。頭に浮かんだ第一候補は、やまなみ牧場。心ひ...
「ラムネ温泉?。なんだそれ」。聞き慣れない名前に興味をそそられた。で、さっそくその温泉があるという長湯に。周囲を山々の新緑に包まれ、中央を芹川の清流が走る長湯温泉。車を乗り捨て、目にまぶしい新緑を楽しみながら同川沿いにぶらぶら歩いていくこ...
誰にでもしょっぱい経験はあるもの。でも、しょっぱいお風呂は珍しいのでは…。目の前に広がる佐伯湾を眺め、湯船につかり、手足を思いっきり伸ばしながら、そんなことを考えた。あまり熱くない湯加減もいい。「湯上がりは肌がすべすべするよ」と常連客。 ...
つかって良し。飲んで良し。胃腸病に効くと有名なお湯―。前夜の酒宴でもたれた胃を癒やしてくれそうだ。もしかしたら、なかなか完治しない右足首の骨折にも、効くかもしれない。 町中心部から車で約20分。花合野川沿いの県道を進むと山あいに、鎌倉...
思わずサングラスを外し、エアコンを止め、車の窓を開けた。ラジオも切った。大分自動車道九重インターチェンジを下り、走ること10分。頭上には、覆いかぶさるように枝を伸ばした木々の緑。耳に響くのは小鳥のさえずり、岩をかみながら走る渓流の水音。全...
風呂上がりに、つえを置き忘れて帰る人が多いらしい。県内屈指の高原美が楽しめる国道442号を離れ、熊本県産山村方面に向かったところにある白丹地区。温泉が出ないといわれたこの地区に、住民が念願の温泉を掘り当てて1年余りになる。 「あんた、...
夏といえばやっぱり、海。だが豊富な源泉と泉質を誇る別府八湯には、海にも負けないブルーの湯がある。温泉名人たちが「別府一の癒やしの湯」として愛する湯―。そんな一味違った”海”を体感しようと、山あいへ車を走らせた。 ラクテンチの下から、か...
古代山岳仏教で、神仏が宿る霊山として修験者を数多く集めたという八面山(標高695m)。山ろくにある深山幽谷の地に、温泉浴と森林浴を同時に楽しめる”桃源郷”があると聞きつけた。もしかしたら日々の俗塵(ぞくじん)を洗い流してくれるかも。「なら...
岡藩7万石の城下町竹田。町中を流れる稲葉川沿いに花水月はある。城下町の町並みを意識した和風の外観。「設備も機能もこれだけの施設はめったにない。贅(ぜい)を尽くした風呂。お客さんは必ず満足してくれる」。高島貞俊支配人に導かれ館内へ。 大...
「心臓発作になるかもしれん。後は頼む」と、かみさんに告げてから(もちろん冗談)、家を出た。手には海水パンツ。取材というより、気分は「修行」だ。 猛暑続きとはいえ、冷泉の「寒の地獄」をあなどってはいけない。水温は、体温よりぐっと低い13...
特産品のバラ、年間200万人が訪れる高塚愛宕地蔵尊で有名な天瀬町。だが何と言っても、JR天ケ瀬駅近く、玖珠川の両岸沿いに並ぶ旅館街の露天風呂が町の顔だろう。その露天風呂は全部で九カ所ある。 「写真を撮るのでしたら、薄暮のころが一番きれ...
朝晩はしのぎやすくなったとはいえ今年の夏は猛暑続き。わが身は秋風が吹き始めても夏ばてモードのまま。そんなとき「夏場は特にお勧め。涼しさ請け合い」という耳寄りな情報が。出掛けてみない手はない。 お目当ては、久住高原赤川登山口そばの一軒宿...
豪華さの象徴といえば”金”。その金を使ったぜいたくな温泉があるという。金ぱく入りのお湯?それとも…。期待に胸を膨らませ、そのゴージャスな温泉を訪れた。 旅館「べっぷ昭和園」の露天風呂”金の湯”。江戸時代、周辺で金の採掘が行われたことに...
国道210号を進む車の窓から流れ込む風には、早くも秋の香りが混じる。目指すは天瀬町湯ノ釣温泉の旅館「渓仙閣」。温泉マニアの知人が「名湯」とお墨付きを与えた露天風呂があるという。 出迎えてくれたのは江藤安充社長(70)。あいさつもそこそ...
鹿鳴越(かなごえ)連山、鋸山(のこぎりさん)、津波戸山(つわどさん)…。周囲の緑濃い山々に沿って、絶えずそよぐ「風」は、山香町の大きな魅力。厳しい残暑を追い払う湯上がりの涼風を求めて、山香温泉風の郷を訪ねた。 風の郷は2000年に山香...
「大分に生まれてよかった」とつくづく思った。露天風呂で思い切り手足を伸ばし、風呂上がりに座敷で大分名物の団子汁を一杯。おにぎりもおいしい。くじゅう山群の1つ、大船山を間近に望む「七里田温泉館・木乃葉の湯」は、地元の食材とわき水をふんだんに...
温泉、自然、人情豊かな院内町南院内地区へ向け、宇佐市方面から国道387号を南へ。温泉の入り口で、週3~4回は来るという中津市からの常連男性(65)と出会った。「湯船が広くて、自然石を敷き詰めた感じが、何とも風流ですよ」と男性。 番台に...
日本一の質量の温泉を誇る泉都別府にあって、人里離れた山中に全国から愛好家が訪れる秘湯がある。その名は「ヘビん湯」。そこは大自然に抱かれた渓流沿いの”野天”風呂。人情あふれる街の湯もいいが、湯船につかって季節を肌で実感できる野湯もまた格別の...
くじゅう連山から流れ出す鳴子川のせせらぎが紅葉に彩られた谷あいに響く。2軒の旅館に挟まれた木造の共同浴場は落ち着いたたたずまいだ。現在の建物は1993年に九重町が建て替えた。田野中部地区の約200世帯でつくる管理組合が運営している。 ...
「梅の里・大山町に絶景の温泉施設が誕生」と聞けば行くしかないと、タオルを手に車に飛び乗った。 目指すは大山町西大山の国道212号近く。大山川(筑後川)が悠久の時を経て造り上げた「響渓谷」を望むポイント。町内最大の梅園、大久保台梅園の一...
「優柔不断」な性格としては悩ましい限り。さらに「欲張り」ともくれば、当然のように、あれもこれもで時間はかかるばかり。 「たかが温泉」とあなどることなかれ。九重星生ホテル自慢の山恵の湯には、ダイナミックな露天風呂が11種類。衣服を脱いで...
車のフロントガラスに舞う、山吹色のイチョウの葉に冬の訪れを感じながら、湯平温泉に”初上陸”した。車を降りて、情緒あふれる温泉街の坂道を上る。日ごろの運動不足を反省しつつ、息を切らせてたどり着いたのが1897(明治30)年創業の老舗旅館「新...
「長湯温泉といえば?」 「日本一の炭酸泉、それに御前湯かな」―。 知人らは質問にこう口をそろえる。 御前湯といえば、1998年のオープン以来、毎年約13万人が訪れ、長湯温泉を全国にPRする人気の公共温泉だ。何しろ、同湯の成功を見た他...
何て大胆なネーミング。その名も「極楽温泉」。さらに道端の案内板には「名水 入れば分かる」。ストレートな文句は、毎日の仕事で語彙(ごい)や表現力の乏しさに痛んでいたハートをわしづかみ。大分市内から早速車を走らせた。 挾間町来鉢。どこまで...
仏教文化が花開いた六郷満山・国東半島の中で、山岳仏教の修験場の1つに数えられる香々地町夷(えびす)の夷谷・中山仙境。その谷の奥に、効能豊かな褐色の湯をたたえる温泉がある。訪れたのは県内各地で初雪が観測された日。温泉を目指して谷を上るうち、...
湯煙が上り、温泉場の情緒が今も色濃く残る鉄輪温泉。「むし湯」はその中心に位置し、付近の狭い路地には旅館や土産店が所狭しと並ぶ。歴史は古く、鎌倉時代に時宗(じしゅう)の開祖・一遍上人が九州行脚の折に創設した。1970年に改築され、今に至って...
冬を探しに、久住へ車を走らせた。温泉好きの小1の長女、まだ9ヵ月これから旬のイチゴがおいしいと評判だ。併設しているのが障害者の雇用の確保や社会参加の場として、昨年7月にオープンした温泉館「大地乃湯」。 高原の冬景色を眺めながら、杉木立...
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