街中のメーンストリートを、郊外の田園風景の中を、バスが走る。誰もが手軽に利用するバス路線は大分市内の隅々に延びている。バス停を訪ねて、その近くに暮らす人たちや自然の姿、旧跡などをシリーズでスケッチする。
※大分合同新聞 朝刊大分・別府面 2004(平成16)年5月23日~2006(平成18)年4月2日掲載
街中のメーンストリートを、郊外の田園風景の中を、バスが走る。誰もが手軽に利用するバス路線は大分市内の隅々に延びている。バス停を訪ねて、その近くに暮らす人たちや自然の姿、旧跡などをシリーズでスケッチする。 ◇ ◇ ◇ ...
「鶴崎踊」をはじめとするさまざまな文化をはぐくみ、豊かな歴史ロマンに彩られた大分市鶴崎地区。中心商店街から南に少し下った乙津川のそばに、加藤清正公創建という由緒を誇る法心寺が荘厳なたたずまいを見せる。...
目の前に別府湾を望み、山の斜面に家々が立つ大分市田ノ浦地区。高崎山自然動物園にほど近い地区は、露地ビワの産地として知られる。袋掛けされた中で熟す黄色い実は、初夏の風物詩だ。約60戸の農家で栽培している。...
「心が安らぎました。また来ます――その言葉がうれしい」。大分市嶺にある野菜直売所「吉野梅園の里ふるさと館」。木のぬくもりに包まれた店内で代表の三浦スミヱさん(69)は、笑顔で話してくれた。 年配女性の働く場所を――と、1998年12月...
大分市横瀬の中古車センター「トヨタマイカーランド富士見」の1室にある。誰でも気軽に利用できる交流スペースだ。近くの富士見が丘団地の住民を中心に、さまざまな人々との出会いをはぐくむ場として活用されている。 約8千人が暮らす富士見が丘団地...
「ビィーン」――100人乗りの「ドリームサファイア」号のエンジンが、ひときわ大きなうなりを上げ、プロペラが回り始めた。黒いスカートが一気に膨らみ、白い船体を持ち上げた。ホーバークラフトの巨体が軽々と走り出し、大分川へのスロープを滑り降りた...
「あそこではさみを動かしているのがハクセンシオマネキ、こっちにはチゴガニ、ヨシの中にはアシハラガニがいます」。干潮の浜の上で、神崎護さん(65)=坂ノ市公民館社会教育指導員=が指さした。打ち上げられたアオサから磯の香りが漂い、砂丘にはハマ...
夏祭り「長浜さま」の余韻が残る長浜神社周辺。大分市中心部の東側にあるこの地域は、第2次大戦の戦禍を免れた。爆撃を受けた中心部に代わって映画館や青果市場、精肉店、鮮魚店、呉服店などが軒を並べ、生活に必要な物がすべて賄えた。...
大分市の新高松東地区。この夏、住民待望の山車が町を練る。笛と太鼓の音、人々の熱気があふれる鷹松神社の夏祭りが近づいた。30、31の両日、地区は祭り一色になる。 地区はこれまで、1982年に自治会が購入した子ども用の山車で祭りに参加して...
「犬の要求に応え、その能力を引き出すことが大切。同じ犬好きとして少しでも手助けができれば」。大分市角子原で「吉田警察犬訓練所」を開設している吉田寿男さん(67)は、犬のしつけに悩む人たちの相談に乗っている。訓練所には預かった犬を含めて17...
「冷たーい」「僕、泳げたよー」。緑深い山里に子どもたちのはしゃぎ声が響く。大分市河原内の河原内川河川プールには7月20日のオープン以来、毎日200―300人、土、日曜日には1,000人を超える子どもたちや家族連れが訪れている。 プール...
近世の輪中集落の景観を色濃く残す高田地区丸亀。幅約2mの狭い路地を進むと、玉石や切り石を積み上げた石垣が所々途切れながら続く。畑地と街路の境界にも低めの石積み。「雨の後に、ここから水がじょぼじょぼ流れ出る眺めが好きなんですよ」。輪中に詳し...
芝の緑が広がる大分市の平和市民公園・わんぱく広場。公園の南側に、お下げ髪に片手を添えて静かにたたずむ「ムッちゃん平和像」。平和への願いを絶やさないように――と、生花や折り鶴が像を温かく囲む。 ムッちゃんの物語の舞台は、第2次大戦中の防...
大分市津留地区に、江戸時代から伝わる民話「甚吉物語」がある。 ――病気を患う母親と貧しく暮らす孝行息子の甚吉がいた。甚吉は母に早く元気になってもらいたい一心で、仏にわびながら、他人の畑から母親の大好物のウリを盗んだ。...
県内の秋祭りのトップを切る「賀来の市」。9月1日から大分市の賀来神社で始まる。柞原八幡宮からご神体を迎える勇壮な行列を一目見ようと、毎年多くの見物客が訪れる。大分市の3大祭りの1つとされる。 賀来神社の疋田辰夫総代会長は「地元民にとっ...
「コースもスタッフの気配りも最高!」「すごく楽しい大会でした。また来年も開催してください」――。8月に大分市の高尾山自然公園で本格的なマウンテンバイクの大会が開かれた。参加者から事務局の「サイクルショップROPPOロッ...
大分市市尾の県道臼杵・坂ノ市線沿い。モダンな外観の店舗に入ると、笑顔を浮かべた女性販売スタッフの朗らかな声。内部はゆったりとした明るい空間が広がり、奥からはクッキーを焼く甘いにおい……。...
大分市の新日鉄大分製鉄所構内には緑地保全林がある。うっそうと茂る緑の木々の中に、2体の地蔵尊が静かにたたずんでいる。長い間、地元の住民や製鉄所の社員を見守り、親しまれてきたお地蔵様だ。 由来は江戸時代にさかのぼる。...
大分市の吉野校区公民館長、後藤吉彦さん(62)=同市吉野原=には「吉野原焼・吉彦窯」という”陶芸家”の顔もある。 2002年3月、戸次小学校長を最後に退職した元教員。1998年、「60歳から陶芸をするぞ」と一念発起し、自宅の建て直しに...
大分市元町に、静かにたたずむ大分元町石仏。木造の覆い屋の中には約3mの本尊・薬師如来像が鎮座し、穏やかな表情で町を見守っている。元町の人々は昔から信仰の対象として敬い、今では境内の美化活動を通して地域の文化財を守る取り組みも続けている。...
「下郡工業団地」という通称がなじんでいるため、バス停にも使われている。正式名称は「大分工業団地」。地場の事業所でつくった「大分金属工業団地」「府内金属加工」「大分家具建材工業」の3組合の連合会が造成し、1966年に完成した。 当初は組...
大分市上志村の大野川右岸の河川敷に広がる一面のコスモス畑。密集した赤、白、ピンクのかれんな花々が秋の日差しを受けながら、川風に揺られている。傍らには弁当を持って訪れた親子連れ。「コスモスと大野川を眺めながら食べようと思って。きれいで本当に...
大分市郊外の住宅団地、ふじが丘の一画にある木造の家。主婦の伊藤登志子さん(65)=市内東大道=が、昔ながらのまんじゅう作りに取り組んでいる工房だ。「母親や祖母らが作っていたようなまんじゅうを多くの人に食べてもらいたい」と始めて10年目にな...
大分市津守の碇いかり山は、JR豊肥線・滝尾駅の南東側に位置する標高56mの低山。...
「すごい、大きい」「面白い形だなあ」――。大分市里の国指定史跡「亀塚古墳」の墳丘の頂上で、見学に訪れた臼杵市下南小学校の6年生たちが歓声を上げた。 風が吹き抜ける墳丘から北を向けば、別府湾から国東半島が視界いっぱいに広がる。南には緑の...
「ヒューン」「キュッキュッ」――。時速60kmで疾走するラジコンカー。直線を駆け抜ける際にうなるモーターの心地よい加速音、コーナリングやブレーキで鳴るタイヤの摩擦音。路面をこする車体の底からは火花が飛び散る。...
別府湾を望む大分市生石港町のはずれ、住宅地の一画にこんもりとした小山がある。草木が生い茂り、岩肌がのぞくこの山は、明治時代以降の埋め立てで陸続きになったが、かつては海の中に浮かんでいた。地元の人たちから「小島山」という名で親しまれている。...
約6・6平方mの小さな弁当店。ここには決まったメニューはない。「旬の食材に感謝し、心から”いただきます”と食べてもらえる弁当を作り続けたい」。それが店主、生野和美さん(46)=庄内町=の願いだ。...
雑木林や竹林に囲まれ、園内に小川が流れる。手入れの行き届いた芝生広場では、親子連れや高齢者夫婦が憩いの時間を過ごしている。 園内の自然豊かな環境は、地域住民の努力に支えられている。「七瀬川自然公園を支える会」(志水創一会長)の活動もそ...
大分市細地区を通る国道197号(旧道)から枝分かれして、幅1・5mほどの狭い道が山際に沿って抜けている。地区内には路地が網の目のように走り、所々にお地蔵様がたたずんでいる。 地元の郷土史家・河野太助さん(86)は子どものころ、家の前を...
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