これからのものづくりには文化が必要と考える白水高広さん(左)=2月、福岡県八女市のうなぎの寝床
綿素材で軽くて丈夫な久留米絣(くるめがすり)。もんぺは昔ながらの農作業着だが、最近はファッション着「MONPE」として注目を集めている。福岡県八女市のセレクトショップ「うなぎの寝床」は地域産品を売るだけでなく、作る行為を文化という価値と捉え、地域文化商社を名乗る。
昨年末、大分市の府内五番街名店ビルの一室に期間限定のアンテナショップ「うなぎの寝床の冬支度@n406」が出店した。人気商品のMONPEを中心に、デザインの行き届いた福岡県筑後地方の商品が並んだ。八女市など筑後地方を中心に「車に乗り日帰りで帰ってこられる範囲」の工芸品や食品加工品、雑貨などを扱っている。
代表の白水高広さん(32)は大分大学工学部で建築、主に都市計画を学んだ。卒業後、デザイナーとして活動中に声が掛かったのが「九州ちくご元気計画」だった。福岡県が音頭を取り、12市町村が参加。プロデューサーがブンボ代表の江副直樹さん(日田市)。今回の期間限定で出店したn406のオーナーだ。
「線香花火をリデザインすると1箱1万円でも売れる。製造現場を見れば、1万5千円の弁当箱でも高くはないと思える」と江副さん。「地域商社で成功したケースを見たことがない。単なる流通だと苦しい。価値を加えてこそ人の心は動くのです」と続けた。
白水さんはプロジェクトに2年半参加した。そこで気付いたのが、東京や福岡では買えるのに、地元の筑後で商品を見たり、売る場所がないということ。アンテナショップとして「うなぎの寝床」を2012年に始めた。作り手と使い手をつなぐのがコンセプト。MONPEではメーカーにもなるし、商社の役割もこなす。「大分大学で都市計画を学んで良かった。町や地域に必要な機能が見えてくるんです」と白水さん。
現在の立ち位置は地域文化商社だ。「伝統工芸は情緒的な物言いをされたりするが、子どもが継げない理由は経済。経済が回らないと伝統工芸も残らない」。だから手仕事の機械化も進めるし、伝統の技を保存するためカメラも回す。映像や編集の力が評価され、沖縄の琉球絣や佐賀県の職人をオランダに紹介する事業も請け負った。オランダのデザイナーとのコラボ企画も動き始めた。
「今後は体験とか暮らしがもっと重要視される。世界中の地域文化の継承を助けるシステムを作りたい」
白水さんの挑戦はスケールが大きい。