集合知でイノベーションを起こそう。リハビリでも使えるマジックフルートを発表するワークショップ参加者=2月17日、大分市上野丘東の県立芸術文化短大
竹田市がクラフトのまちとして脚光を浴びている。竹工芸、陶芸、木工、皮革、布、絵画などの作り手たちが集まってくる。県内外から移住してきた作家はざっと数えて40人。城下町を中心に竹田で暮らしながら制作を続ける。
春の芽吹き展二〇一八「たけた見本市」とバイヤー向け商談会が2月23~25日、市内竹田町のR&Sで開かれた。旧家具店の倉庫をリノベーションしたギャラリーには市内の作り手11人の作品が並んだ。初の見本市開催に向け、市企画情報課TOP戦略推進室の舞希(まいのぞみ)さん(32)は精力的に駆け回った。
市は農村回帰宣言都市を掲げ、移住定住支援に努めている。作り手を地域おこし協力隊として採用したり、インキュベーション型工房「竹田総合学院」を開放するなど、作り手の支援策を打ち出す。「作家としてまだ生計が立たない人もいる。協力隊で収入を支えることも必要。見本市で作家の販路開拓を後押ししたい」と舞さん。
見本市は市内の民間団体が取り組む「お店×作家コラボプロジェクト」との共催。作り手の作品をレストランや公共施設などにリースする橋渡し役を担っている。陶作家でプロジェクト代表の甲斐哲哉さん(66)は「竹田のこだわりの農作物を自分の器にのせてみたいと思ったのが始まりでした」と振り返る。デザイン・制作を担当する地域おこし協力隊の阿部珠美さん(44)は「お店の強みと作家の強みを掛け合わせると生活の楽しみ、地域の魅力につながるという考え方で進めています」と説明した。
現在は市内のレストランや陶器店、公共施設などで皿や絵画、竹のオブジェなどをリースしている。気に入れば購入するし、破損も含めてリース代を設定し、リスクは共有する。県立芸術文化短大で工芸デザインを学んだ宮崎市出身の磁器作家山田俊吾さん(29)は「レストランへのリースは、作品を知ってもらう格好の場。黒の磁器のオーダーがあるなど、新しいチャレンジもしています」と小粋な板皿が好評を得ている。
今回の見本市には、東京や福岡、大分市内などのギャラリーやバイヤーら10組12人を招いた。昼食は地元の食材にこだわり、地元作家の器に盛り付けて振る舞った。「竹田は食べ物も作品も素晴らしいと満足してもらいました」と舞さん。
作り手たちが町に関わることで、竹田の暮らしは確実に豊かになっている。