加藤厚子さん 別府市上田の湯町・ホテル白菊
「ここの温泉は別府市内でも有数の広さ。開放的な気分になれるんです。」
初代王位名人の加藤厚子さん(67)が案内してくれたのは、別府市上田の湯町にある「ホテル白菊」。二つの露天風呂付き大浴場に男女日替わりで入ることができる。従業員としても風呂を知り尽くした加藤さんが特にお薦めなのが、温水プールを改装した「楠湯殿」だ。
ヒノキ造りの内湯を抜け、広々とした露天風呂へー。緑に囲まれた風呂から頭上を見上げると「ホテルの象徴」という大きなクスノキが枝を広げる。「風が吹くと葉が浴槽に舞い落ちるんですよ」。風呂の中心部には「落ち葉を拾って自然に返してあげてね」と書かれた掲示板と共に、小さな熊手とざるが置かれているのがほほ笑ましい。「ツツジやモミジなど四季折々の景色が楽しめます。特に雪景色が最高よ」
自家泉源で泉質はアルカリ性の単純泉。無色透明な湯は「香りも強くないし、県外客など温泉に慣れていない人でも大丈夫でしょ」と加藤さん。源泉は50〜62度と高温で入浴に適した温度にするため加水しているという。「湯温は熱すぎない40〜41度程度。ゆっくり浸かれるし、塩化物泉なのでいつまでもポカポカするんですよ」と汗を拭う。
現在、55回名人に挑戦中の加藤さん。休日には一気に十数カ所を回ることも。「時間がなくて大変だけど、地元の人たちとのおしゃべりが楽しみだからね」と笑う。
入る前に体を洗う、先に入っている人がいたら「失礼します」とあいさつする、体をきちんと拭いてから脱衣場に行くー。「マナーを守って、みんなが気持ち良く癒される場所であってほしい。温泉のありがたさを忘れないようにしなくちゃね」
かとう・あつこ 別府市出身。2002年からホテル白菊に勤務。13年に別府八湯温泉道で44回目の名人を取得、初代王位名人となる。月に70〜80カ所を巡り、55回目の名人に挑戦中。