2024年度地球さんご賞・安部龍太郎賞に輝いた平島愛梨さんの作品と挿絵
大分合同新聞社は創刊140周年を記念して、歴史小説家で直木賞作家の安部龍太郎氏らと、環境問題を考える作文コンクール「地球さんご賞」に取り組みます。過去の受賞作品を、Gateインパクトで順次、紹介していきます。使用している漢字や表現は、作品のまま掲載します。
僕は、薄暗い森の中にいた。あてもなく歩いていると小屋のような建物が見えた。近づいてみると食事処と書かれた看板があった。どうやら飲食店のようだ。ひどくお腹が空いていた僕は迷わず中へと入っていった。扉を開けると目の前に巨大な水槽があり、その中にはたくさんの魚達が優雅に泳いでいた。
「いらっしゃいませ。」
水槽の裏から女性が姿を現してこう説明した。
「ここは地球の海をコンセプトにしたお店でございます。本日のおすすめは“人間からの贈り物、新鮮な魚の生き造り”でございます。」
僕はすぐ何か食べたかったので女性がおすすめした料理を注文して、カウンターに座った。
「では、現在の海を再現するために調味料を水槽の中に入れていきます。まずは油、洗剤、工場排水、農薬をコップ一杯。次にプラスチック、ゴミ袋を少々。」
彼女はためらいもなくどんどん入れていった。すると中にいる魚達はピクピクッとけいれんしはじめ動かなくなっていった。次第に水の色がにごりだし、中の様子が見えなくなってしまった。僕はあ然とした。
「どうしてこんなことを…。」
彼女は無言で水槽の中から動かなくなった魚を取り出し手際よく捌いて盛り付け、僕の前に差し出した。その刺身はとてもおいしそうで思わずヨダレを垂らしてしまった。しかしさっきの光景を思い出すととても食べる気にはなれなかった。
「どうしてこんなことを…。」
「人間は有害物質を海に流し汚しています。食物連鎖で結局はその有害物質は人間も摂取していることになるのです。それを日本のことわざで因果応報というみたいですね。まあ海に限らず地上でも同じことが起こっていますが。いずれは自分がその毒を食らい、病に冒されるでしょう。」
僕はショックを受け涙が出てきた。
「一つ方法があります。この瓶には解毒してくれるバクテリアが入っています。しかしこの水槽を元に戻すには一週間かかるので待ってもらわないといけません。待ちますか?」
魚がこうなってしまった原因は自分達にある。この魚を食べることで現実を受け止め、海を救おうと誓おう。海を救うことは自分達が安心して暮らせる世の中になることに繋がるはずだ。
「僕は…食べる! そして他の魚を救ってくれ。」
涙を拭い、刺身を一切れ口に入れようとした途端、急に周りが明るくなって思わず目を閉じた。
再び目を開けるとそこは自分の部屋だった。僕は何が起こったのか状況が分からぬまましばらくぼう然としていた。昨日の夜、水質汚染について調べていたらいつの間にか眠ってしまったようだ。夢の内容を思い出し、考え込んだ。そして意を決して立ち上がり、僕はカーテンを勢いよく開けた。